コレクション展2020「うつし、描かれた港と水辺」(1)

2020.3.1

横浜市民ギャラリーコレクション展2020「うつし、描かれた港と水辺」は残念ながら開催中止となりましたが、展覧会を楽しみにしてくださっていたみなさまにその魅力をお届けしたい!ということで、本日よりブログでお伝えしていきます。
会場風景や、約50点の出品作品から選んだ「きょうの1点」、サポーター活動の様子などを日々ご紹介していきます。
3月15日(日)まで毎日更新する予定ですので、どうぞ最後までおたのしみに!




■横浜市民ギャラリーコレクション展2020「うつし、描かれた港と水辺」

横浜市民ギャラリーには、約1,300点の所蔵作品があります。これらの作品の多くは、1964年の開館以来、企画展や国際展などの機に収蔵されたものです。特に国際展の折には地元作家を中心に横浜の風景を主題として新作を依頼することがたびたびあったことから、横浜の風景を描いた作品が当館には数多く見られます。今回はその中でも、港や海、水辺を描いた作品を特集しています。
横浜港をはじめ、外部との玄関口、物流の拠点である港、古くから絵画や文学で題材となってきた水辺は、人びとの生活に密着する存在、郷愁の対象の両方になり得ます。本展は横浜を中心に港や水辺をうつし描いた油彩、日本画、写真、版画など55点で構成しています。


[展覧会の章立て]
1. 写真でみる戦後―昭和のミナト 横浜
2. 描かれた横浜港 1940~80年代
3. 水辺と人々
特集展示 牛田雞村の描いた横浜―開港期の風景
4. 港と水辺 アラカルト―版画と漫画の多様な表現

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本日は第1章よりお届けします。


1. 写真でみる戦後―昭和のミナト 横浜


横浜港は時代とともにその役割やかたちを変え、仕事や旅のため港に集う人びとや周辺に暮らす市民と密接に関わってきました。報道写真家として時代の推移を見守った五十嵐英壽(1931年生まれ)や浜口タカシ(1931-2018)は、発展を続ける港に寄港する船や、出立・到着する人びとをつぶさに撮影しました。奥村泰宏(1914-1995)、常盤とよ子(1928-2019)の夫婦は、進駐軍の接収下でたくましく生きる市民や、彼らと対照的な立場にある進駐軍の人物を、港をはじめとした当時の横浜の風景とともに撮影し、同時代の横浜のあり様をうつしとりました。

小野肇(1913-1999)や西村建子(1940年生まれ)らは、高度成長期を経て貨物の取扱量の増加にともない増築された本牧ふ頭や、1989年に開通した横浜ベイブリッジの建造中の様子、また現在でも開発が進められているみなとみらい21地区など、横浜の発展を象徴する建築群や、その林立で一変した横浜港の風景をダイナミックにとらえています。



■きょうの1点


五十嵐英壽(1931年生まれ)

《ハマの三塔》1953年 ゼラチン・シルバー・プリント 47.6×31.9cm


五十嵐は北海道生まれ。大さん橋が接収解除となった1952年に神奈川新聞編集局写真部に入社。出船や入船、船客、波止場で働く人びと、港での催事や出来事など、横浜港の様々な風景を写し続けてきました。
歴史的資料として貴重な記録でもある五十嵐の写真には、移り変わる横浜の風景と、港を舞台にした多種多様な人間ドラマが写し出されています。本作では、フランス船マルセイエーズ号を手前に配し、遠景に“横浜三塔”の名称で親しまれている横浜税関(クイーン)、横浜市開港記念会館(ジャック)、神奈川県庁本庁舎(キング)がとらえられています。


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横浜市民ギャラリーでは、「横浜市民ギャラリークロニクル1964-2014」展に合わせて、五十嵐英壽氏のインタビューを収録しました。インタビュー動画は、インタビューアーカイブからご覧いただけます。ぜひご覧ください!
インタビューアーカイブ→https://ycag.yafjp.org/our_exhibition_archive/interview-archive/