大人のためのアトリエ講座「デッサン―立体感と質感について実践から考える」開催レポート

2019.4.11

画家の石田淳一さんを講師に迎えて「デッサン―立体感と質感について実践から考える」が開催されました。

1つのモチーフに時間をかけて向き合い、1枚のデッサンを描きます。

初回:1130

リンゴのデッサンを始める前に、コピー用紙に印刷された円の中に鉛筆で影を付けて球体を描きます。

今回はハッチングで細かく線を重ねて影を付けて、明るい部分は紙の白を残します。

1つ目の球体が描き終わったら、次の円でもう一度立体感をだす練習です。今度はハッチングの線を球体に沿ったカーブで描きます。立体が球体であることを表現できます。

次に、自分で丸を描いてハッチングで影を付けます。

目も慣れてきて細かなトーンが付けられるようになってきました。

2回目:127

先週のおさらいで球体を描きます。球体だけでなく球体が置いてあるテーブルに落ちた影も描きます。

いよいよモチーフのリンゴが登場です。

描き始める前に、リンゴを手で触ってみていろいろな角度から観察します。

画面の中心より少し下にモチーフを配置すると絵が安定します。描く大きさは実物大だと違和感がなくて良いそうです。

白い紙にどのくらいの大きさで描くか当たりを付けます。

濃く描くと後でコントロールしにくくなるので薄く描きます。

実際のリンゴには輪郭線はないのでリンゴと空間の境目を見るような感じです。

3回目:1214

リンゴのデッサンの続きです。

鉛筆を動かす時間も大切ですが、観察したり考えたりする時間も大切です。すこし手を止めてこの後どう進めるか計画を練り直してもいいかもしれません。時々自分の席を離れてほかの方のデッサンをのぞいてみるのも参考になります。

テーブルには、窓からの光と照明からの光によっていくつかの陰が見えます。

反射光があってテーブルに落ちた影よりリンゴのお尻が明るくみえたりします。

時間をかけて観察すると今まで気付かなかったことも見えてきます。

石田さんは1人ずつ丁寧にアドバイスをしていました。みなさん自分の絵を描きながら、他の人へのアドバイスにも耳を傾けて参考になったようです。

4回目:1221

前回に引き続きリンゴのデッサンです。初めは立体感を意識して描いていましたが最後の仕上げ段階なので質感も考えます。

目の前のリンゴに丁寧に向き合い自身で感じ、そして丁寧に鉛筆の線をかさねます。

線を1本引くか、引かずに白を残すかを冷静に見極めて描きます。

石田さんは「デッサンとは描いた絵が目の前のモチーフに近づいてきたという実感を得る事」と考えているそうです。

最後にデッサンを額に入れて完成です!

リンゴのつるつるした表面、赤さ、丸さ、肩がふくらんでお尻はスマートになっているフォルムなどよく観察されていて、立体感も意識されたデッサンが出来上がりました。




大人のためのアトリエ講座「金継ぎ入門 欠けた器を漆でなおす」開催レポート

2019.3.5

村田優香里さんと坂本恵実さんによるユニット“うるしさん”を講師に迎えて「金継ぎ入門欠けた器を漆でなおす」が開催されました。

初回:1115

はじめに、スライドを見ながら漆についてのレクチャーを受けました。

漆の樹から取れる樹液は生のままだとほとんどの人がかぶれてしまいますが、固まるとかぶれ成分がなくなります。そういえば、多くの方が漆塗りのお椀で味噌汁を飲んでも大丈夫ですね。

今回は参加者の方がそれぞれ持参した器の欠けを金継ぎで直していきます。

作業の前に、うるしさんのデモンストレーションがありました。

まず、器の欠けの周りをマスキングテープで覆います。

ここから漆を扱うのでかぶれ対策でゴム手袋、アームカバー、エプロンを着けます。

器の欠けの断面にエタノールで薄めた生漆を塗ります。

ひび割れがある器は、この工程でひび割れにも染み込ませて水漏れしないようにします。

生漆はすぐにふき取ります。

いよいよ器の欠けを埋める作業です。埋める材料はサビといって砥の粉と水を練って生漆を混ぜたものを使います。サビをヘラで盛って欠けた部分を形作ります。

漆風呂に入れてこの日は終了です。漆風呂とは温度と湿度を保つためのもので今回は段ボール箱にヒーターと濡れ布巾を入れたものを使います。

2回目:1122

先週付けたサビが固まっているので凸凹をカッターで削ります。

器の表面より0.2㎜くらい盛り上がるように新たなサビをつけます。

サビは固まると痩せます。その分を考慮して付けるとよいそうです。

作業が終わったら漆風呂に器を入れます。


3回目:1129

先週つけたサビを器のかたちに沿ってカッターで完成形に削ります。

初日に付けたマスキングテープを目印にすると器の欠けの大きさが分かりやすいです。

次に1000番目の耐水ペーパーで表面をつるつるに研ぎます。

生漆をエタノールで薄めたものを筆で塗り、染み込ませます。

10分ほど漆風呂に入れて固めてから黒呂色漆(くろろいろうるし/黒い顔料を混ぜた漆)を塗ります。

厚く塗ると表面だけ乾いて皺ができるので薄く塗ります。

4回目:126

1500番目の耐水ペーパーで漆の表面がマットになるまで研ぎます。次は弁柄漆(酸化鉄を混ぜた赤色の漆)を薄く塗ります。

漆風呂に入れて35~45分待って少しだけ固めます。これを「乾口(ひくち)をとる」というそうです。

固まるのを待つ間に最後の金粉仕上げにむけ、銀粉で蒔き方の練習をします。

鮮やかな赤だった弁柄漆が固まり始めると沈んだ赤になります。

よいタイミングになったら、いよいよ金粉を蒔きます。

真綿を小さく丸めたもので金粉を取って赤漆の真上でトントンと指ではじいて金粉を落とします。

全体に金粉が乗ったら余計な金粉を真綿でそっと払い落します。

次に金粉を蒔き詰めます。先ほど蒔いた金粉ではまだ隙間があるのでさらに金粉を蒔いて真綿で押し込みます。

そのあと息を吹きかけて真綿でクルクルと円を描くように磨くと金が輝きます。

漆風呂に24時間以上入れて固まれば完成です!

うるしさんのデモンストレーションとアドバイスは初心者にも分かりやすく、道具や材料が準備されているので金継ぎが気軽に体験できたと思います。

自分で直した器は、持ち帰ってからも日常に使って楽しめそうですね。

大人のためのアトリエ講座「絵画とダンスのワークショップ 絵画に描かれたダンスと音楽~印象派の舞踏会〈ワルツ〉」開催レポート

2018.12.22

舞踊史研究者でダンサー、振付・演出家の市瀬陽子さんを講師に迎えて「絵画とダンスのワークショップ 絵画に描かれたダンスと音楽~印象派の舞踏会〈ワルツ〉」が開催されました。

始めはレクチャーを受けました。

スライドでダンスの場面が描かれた絵画を見ながら、宮廷での舞踏会の様子やマナー、ドレスの流行の移り変わり、日本にダンスが伝わってきた頃の様子などの話を聞きました。

絵画に描き残されたダンスを鑑賞した後は、いよいよ身体を使って体験です。

始めは基本のステップです。

なれてきたら2人でお互いの動きや力を使って動いてみます。

男性役の人のリードで女性役の人がくるっと回ります。ちょっと難くなってきましたが、

音楽にのってみなさん楽しそうです。

特別ゲストでギター演奏家の竹内太郎さんが来てくださいました。現代のアコースティックギターより小さい19世紀のギターは、宮廷で女性が弾いていたそうで素敵な細工が施されています。小さい楽器なのでやさしくここちよい音色です。

最後は竹内さんの生演奏で、なごやかで楽しい雰囲気で踊りました。

レクチャーを始めに受けていたことで、絵画に描かれている場面がどのような雰囲気だったか想像しながら踊ることができました。

 

大人のためのアトリエ講座「自作絵具で描く静物画テンペラと油彩の混合技法」開催レポート

2018.11.20

修復士の上野淑美さんと画家の椿暁子さんを講師に迎えて「自作絵具で描く静物画テンペラと油彩の混合技法」が開催されました。

初回:525

始めにスライドを見ながら、テンペラ画と油彩画の歴史と実際におこなう下地の作り方やテンペラ絵具の作り方などのレクチャーを受けました。

今回は下地作りから始めます。木製のパネルに下地のジェッソ(膠と石膏を混ぜたもの)を7~8層塗り重ねます。刷毛あとが交差するように縦に塗ったら横に塗ります。

ジェッソの厚みがついたら次週までこのまま乾燥させます。

2回目:61

乾いたジェッソの表面を削り平らにします。

まず、紙やすりをかけた時に目印になるように木炭の粉を画面に塗ります。

紙やすりを平らなテーブルに置いて、そこにジェッソを塗った画面を当てて削ります。紙やすりは荒目からだんだん細かい目に替えていきます。

先ほど塗った木炭が見えなくなって真っ白になるまで削れば凸凹がなくなって平らな画面の出来上がりです。

画面が出来上がったら、次は絵具。テンペラメディウムを作ります。卵の黄身1に対してダンマルワニス(乾性油)1/2、リンシードオイル(乾性油)1/2、酢1/2、精製水1/2、に防腐剤と防カビ剤を混ぜます。

出来たテンペラメディウムを冷蔵庫で保管しておけばこの講座の期間中は腐らずに使えます。

3回目:68

この日から、いよいよ絵を描き始めます。

モチーフを見ながら紙に下書きをします。

下書きが出来たらジェッソを塗ったパネルに転写します。

顔料を溶いてテンペラ絵具をつくり、パネルに写した下書きの線を描きます。

テンペラ絵具の作成はまず、パレットに顔料と水を乗せてよく混ぜます。そこにテンペラメディウムを入れて混ぜます。

さらに水を入れて絵具の濃度を調整します。

この日は茶色のテンペラ絵具で下書きをなぞる所まで制作しました。

4回目:615

先週と同じ茶色のテンペラ絵具を作り、陰影を描きます。

次は地透層(じとうそう)です。下地になっているジェッソの吸収性を調整するための下塗りです。

テレピン油(溶剤)とダンマルワニス(乾性油)を絵具皿に取り単色の油絵具をときます。

油に薄く色が付いたような状態の絵具を画面全体に塗ります。

ここから下層描き(かそうがき)です。

下層描きとは透層(油絵具をとき油で薄くのばし描いた層)と白色浮出(テンペラ絵具の白で不透明な層)を数回繰り返し描くことです。

まず、テンペラ絵具のチタニウムホワイト(白)で明るい部分にハイライトをいれます。

次は油絵具でモチーフの色を描きます。陰影の層とモチーフの色の層を何層か繰り返します。

5回目:622

引き続き下層描きを続けます。ある程度描けてきたら中層描きに移ります。

中層描きに入るとテンペラ絵具の描写を減らし薄く溶いた油絵具で描きます。

6回目:629

上層描きに入るとテンペラ絵具は使わず、油絵具で細かい部分まで描いていきます。

最終的に画面全体が油絵具の層で覆われたところで完成です。

最後にみなさんの作品を並べてみました。

今回の技法では、テンペラ絵具の不透明で鮮明な特徴を活かして明るい部分や影を、油絵具の透明な層でモチーフの色彩や背景の表現を描きました。絵具の層が重なっていくと段々と絵に深みが感じられるようになりました。今回の講座でみなさんが体験したように、中世の画家たちはテンペラ絵具を作ったり、油絵具が乾くまで待ったりと時間をかけて制作していたのですね。

大人のためのアトリエ講座 「日本画1日体験ワークショップ 鳥を描く」開催レポート

2018.8.15

日本画家の荒木愛さんを講師に迎えて「日本画1日体験ワークショップ 鳥を描く」が開催されました。

今回は文鳥とインコの下絵から好きな方を選んで麻紙ボードに岩絵具と水干絵具を使って描きます。

まずは講師の荒木さんが用意した下絵と麻紙ボードの間にチャコペーパー(複写紙)を挟んでボールペンでなぞり、麻紙ボードに下絵を写します。

次に写した下絵の輪郭を薄墨でなぞります。これを骨書き(こつがき)といいます。

ただ線をなぞるのではなく、より良い線を描くように心がけるといいそうです。

絵の背景となる色の絵具を作ります。絵具皿に絵具と膠を同量のせて中指でよく混ぜます。

混ざったら膠と同量かやや多めの水を入れてさらに混ぜます。膠が接着剤の役目をして絵具が画面に定着します。

絵具が出来たら背景を塗ります。

背景が塗り終わって絵具が乾いたら、鳥の部分を描き始めます。

今回は水干絵具(すいひえのぐ)と岩絵具(いわえのぐ)を使って描きます。

それぞれ特徴があるので荒木さんにアドバイスをもらいながら自分の絵にあった顔料を使います。

絵具を重ねて描いていきます。だんだんと細部も描き込んで目や足など描くと完成です。

最後にみなさんの作品を並べて講評しました。

2種類の下絵から描いていますが、配色や描き方によってそれぞれ個性がでていました。

顔料の溶き方や色の重ね方を教わって1日で本格的な作品に仕上がりました。

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