2023年度インターン活動(学芸系)レポート

2024.3.30

横浜市民ギャラリーでは、次世代の人材育成と職場体験の場の提供を目的に、2018年度より学生インターンを受入れています。今回は2023年度におこなった、学芸系のインターン活動についてご紹介します。

※子ども向け事業については、以下の記事でご覧ください。

2023年度インターン活動(子ども向け事業)レポート」

 

学芸系のインターン活動は、当館の所蔵作品管理に関する業務を補助する「コレクション管理補助活動」と、過去の展覧会などの事業アーカイブ構築に携わる「事業アーカイブ構築補助活動」の2種類があります。

 

■コレクション管理補助活動

横浜市民ギャラリーには、戦後の横浜の美術シーンを反映する約1,300点のコレクション(収蔵作品)があります。コレクション管理補助活動ではコレクション管理業務の一部を体験、実務補助していただきました。

 

           

 

・コレクション関連データの確認・更新作業

「収蔵作品」ページで公開している作品図版サムネイルの調整や、作品チェックシートの作成、作品カード情報の精査作業など、コレクションや作家にまつわるデータの確認・更新をおこないました。作業を通し、1つ1つの作品を管理するためには地道な積み重ねが必要であることを実感したようです。「作品カードを見ると、作品の保存や修復に必要なことが見えてきて面白かった」という感想もいただきました。

 

 

          

 

IPM点検補助

横浜市民ギャラリーでは、作品を保管する環境を維持するため、清掃や点検を通じ予防を重視するIPM(Integrated Pest Management/総合的有害生物管理)を導入しています。隔月のIPM点検にインターン生も参加し、点検や清掃の補助、記録撮影等を担当しました。IPMの知識を大学で学んでいたインターン生も、想像以上に作業が多いことに驚いている様子でした。IPM点検補助活動については、以下のブログ記事で詳細をご紹介しています。

2023年度インターン活動(学芸系)レポート〜IPM点検補助〜

 

 

■事業アーカイブ構築補助活動

1964年に開館した当館には、長い歴史のなかで開催されてきた多数の展覧会を中心とする資料が保管されています。近年、当館では貴重なこれらの情報を公開すべく、整理・データ化する活動に取り組んでいます。インターン生の皆さんには、これまでに精査してきたデータを再度確認し、ホームページ公開用データを入力する作業を担っていただきました。その成果は、「事業アーカイブ」ページで順次公開しています。

 

           

 

その他、長い歴史を持つ現代美術展「今日の作家展」をはじめとした各種展覧会の写真アルバムを撮影し、データ化する作業も担当してもらいました。当時の美術の動向や、時代の空気が感じられて楽しいと話してくれた方もいました。

 

            

 

 

■インターン生向け鑑賞会

「新・今日の作家展2023 ここにいる―Voice of Place」インターン生向け鑑賞会を実施しました。作品への理解を深め、展覧会企画・運営について一部触れる機会として、担当学芸員が解説し、参加者は真剣な眼差しで作品を鑑賞していました。

 

来田広大 《あどけない空 ー三浦半島のキャベツ畑 》

 

参加したインターン生の感想を下記のブログにまとめています。

「新・今日の作家展2023 ここにいる―Voice of Place」インターン生向け鑑賞会レポート

 

■最終レポート・振り返り

3月にはインターン活動の総括として最終レポートを提出いただき、活動を振り返りました。活動を通して学んだことや考えたことに加え、インターン活動をより良くするためのアイデアなども共有していただき、担当者にとっても学び深い振り返りでした。

               

 

最後に、学芸系インターン生4名の最終レポートから一部抜粋してご紹介します。

 

長い歴史を持つ美術館としても市民への教育普及や交流の場としても活用されている横浜市民ギャラリーでのインターンシップは、現在の自身の研究にも勉強になったことはもちろんですが将来的に美術業界を目指す上で市民ギャラリーを深く知れたかけがえのない経験になったと感じました。(M.E.さん)

 

作品が今日にまでに在る経緯が記された「情報」には作品の存在意義が与えられ、その「情報」を取り扱うことは、美術に限らずあらゆる物を知る際や伝えていく際に必要な証拠となる手段であると考えた。また、情報は多ければ多いほど詳細に知ることができ、集約した情報を正確に受け継いでいくことで後世に残すこともできる。実在していた物が風化されずに現在にとどまり、人から人に渡されていく光景からは時間を超越した繋がりを感じ、その役割を担う仕事は橋渡しのような存在であった。(H.K.さん)

 

本事業を通じて、博物館学芸員の仕事を少しだが経験し、改めて積み重ねの上に築かれたものであることがわかった。これからのキャリアの中で、博物館での職業に携わることができるかは未定だが、地域社会を舞台とするキャリアを考えるために必要な地域資源との向き合い方を学ぶことができた。この経験で得た価値観や知識をこれからのキャリアに生かし、地域社会への貢献につなげていきたいと考える。(M.K.さん)

 

活動の全般をとおして、横浜市民ギャラリーが充実した自主事業、貸館事業、教育普及事業を行えるよう、日々業務に取り組む職員の方々を見ることができました。私はインターン生として学芸活動の補助をしながら、横浜市民ギャラリーの一員として、文化施設を充実させていくことのやりがいや楽しさを感じました。(T.K.さん)

 

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インターン生の皆さんは根気強く活動に取り組んでくださいました。その熱心な活動に、横浜市民ギャラリーも支えられています。約9か月間の活動、お疲れ様でした!