大人のためのアトリエ講座「油絵を描く」開催レポート

2019.8.24

講師に画家の椿暁子さんを迎えて、大人のためのアトリエ講座「油絵を描く」が開催されました。

初回:5月17日

まずは、油絵についてのレクチャーを受けました。今回はF15号のキャンバスに静物画を描きます。

レクチャーの後はさっそく絵にとりかかります。テーブルの上に組まれたモチーフをどの角度から描くか考え、場所が決まったらイーゼルやイスを準備します。モチーフ全体を画面に入れるか、クローズアップして描きたい部分を大きく画面に入れるかを決めて鉛筆で下書きをします。

下書きができたらいよいよ油絵具を使います。はじめは、画面全体になじみやすい色で輪郭を描きます。

テレピン油、リンシードオイル、ダンマルワニスを配合した溶き油を使って、絵の具の硬さを調整します。 画材店に行くとペインティングオイルとして配合してある溶き油が売っていますが、今回は3種類の油の特徴を学びながら実際に配合して使用しました。

2回目:5月24日

前回の絵にさらに重ねて輪郭や陰、背景などを描いていきます。

3回目:5月31日

だいぶ描けてきたので、薄塗りでなくマヨネーズくらいの固さの絵具で厚塗りに挑戦するよう椿さんからアドバイスがありました。

パレットには絵具セットに入っている全色を出しておくと混色して様々な色が作りやすくなります。

色味や構図をもう1度見直しながら進めます。

物と物がかたまっている部分や抜けている空間のバランスをみるとよいそうです。

4日目:6月14日

最終日、全体と細部、主役と脇役、背景の扱いなどのバランスを考えながら描きます。

最後に講評会をしました。

みなさんの絵が並ぶと、背景の扱いや絵具のマチエールなどいろいろな表現があって油絵のおもしろさが感じられました。

「モチーフ部分に時間をかけて描いたように、背景にも手を入れると画面全体がなじみます。」と椿さんからアドバスがありました。

油絵は乾いてからも重ねて描けるため家でさらに加筆してみるのもいいかもしれません。

大人のためのアトリエ講座 「中世ヨーロッパの絵画技法でつくる羊皮紙の栞」開催レポート

2019.6.22

5月12日、大人のためのアトリエ講座「中世ヨーロッパの絵画技法でつくる羊皮紙の栞」が開催されました。


始めにスライドを見ながらのレクチャー。

羊皮紙は中世の時代にパピルス(紙)の代わりとして動物の皮を伸ばして乾燥させたものを使って作られたものです。

同じ時代に使われていた、インクタマバチの幼虫が木の枝につくる虫こぶから作った「虫こぶインク」で描きます。

レクチャーの後は、実際に羽根ペンに虫こぶインクをつけて羊皮紙にイニシャルを描きます。

細い線は、まず太い部分にインクを置き、そこからインクを引くように描くとよいそうです。

穴あけポンチで羊皮紙に穴をあけ、紐を通すと栞になります。

次にテンペラ絵具の作り方とDrolleryという13世紀に祈祷書の余白に描かれていた空想上の動物の絵についてのレクチャーを受けました。次はDrolleryを参考にしながら絵をいれて栞をつくります。

下絵を写して虫こぶインクで線を引いたらいよいよ着色です。

顔料を卵白メディウムと水で溶きテンペラ絵具をつくります。

着色します。

イニシャルと絵、1人2枚ずつ素敵な栞ができました。

羊皮紙はそのままだと波打ってしまうので、栞として本に挟んでおくと良い状態で保存できます。

大人のためのアトリエ講座「人体を描く―クロッキーとデッサン」開催レポート

2019.6.1

前回に引き続き画家の清野晃代さんを講師に迎えて「人体を描く―クロッキーとデッサン」を開催しました。

初回:418

始めに短いレクチャーを受けました。イーゼルは右ききなら右側のぞきで、座った高さから自分の手を真直ぐのばした高さに画面がくるように調整すると描きやすいそうです。

2回目:425

この日はデッサンです。始めに5分ポーズを4種類描いてその中から多数決で固定ポーズを決めます。

デッサンは時間をかけてゆっくり形をみることができます。ポーズの間も清野さんがまわってひとりずつにアドバイスがありました。

3回目:52

着彩デッサンはそれぞれ画材を持ってきて描きました。

色を使ってみると立体感をつかむのが難しく感じましたが、絵としてのおもしろさがでてくるかもしれません。

4回目:59

先週の続きを描いて、最後に講評をしました。

いろいろな表現のデッサンやクロッキーが並びました。清野さんからはそれぞれの絵の良い点やアドバイスがありました。

大人のためのアトリエ講座「デッサン―立体感と質感について実践から考える」開催レポート

2019.4.11

画家の石田淳一さんを講師に迎えて「デッサン―立体感と質感について実践から考える」が開催されました。

1つのモチーフに時間をかけて向き合い、1枚のデッサンを描きます。

初回:1130

リンゴのデッサンを始める前に、コピー用紙に印刷された円の中に鉛筆で影を付けて球体を描きます。

今回はハッチングで細かく線を重ねて影を付けて、明るい部分は紙の白を残します。

1つ目の球体が描き終わったら、次の円でもう一度立体感をだす練習です。今度はハッチングの線を球体に沿ったカーブで描きます。立体が球体であることを表現できます。

次に、自分で丸を描いてハッチングで影を付けます。

目も慣れてきて細かなトーンが付けられるようになってきました。

2回目:127

先週のおさらいで球体を描きます。球体だけでなく球体が置いてあるテーブルに落ちた影も描きます。

いよいよモチーフのリンゴが登場です。

描き始める前に、リンゴを手で触ってみていろいろな角度から観察します。

画面の中心より少し下にモチーフを配置すると絵が安定します。描く大きさは実物大だと違和感がなくて良いそうです。

白い紙にどのくらいの大きさで描くか当たりを付けます。

濃く描くと後でコントロールしにくくなるので薄く描きます。

実際のリンゴには輪郭線はないのでリンゴと空間の境目を見るような感じです。

3回目:1214

リンゴのデッサンの続きです。

鉛筆を動かす時間も大切ですが、観察したり考えたりする時間も大切です。すこし手を止めてこの後どう進めるか計画を練り直してもいいかもしれません。時々自分の席を離れてほかの方のデッサンをのぞいてみるのも参考になります。

テーブルには、窓からの光と照明からの光によっていくつかの陰が見えます。

反射光があってテーブルに落ちた影よりリンゴのお尻が明るくみえたりします。

時間をかけて観察すると今まで気付かなかったことも見えてきます。

石田さんは1人ずつ丁寧にアドバイスをしていました。みなさん自分の絵を描きながら、他の人へのアドバイスにも耳を傾けて参考になったようです。

4回目:1221

前回に引き続きリンゴのデッサンです。初めは立体感を意識して描いていましたが最後の仕上げ段階なので質感も考えます。

目の前のリンゴに丁寧に向き合い自身で感じ、そして丁寧に鉛筆の線をかさねます。

線を1本引くか、引かずに白を残すかを冷静に見極めて描きます。

石田さんは「デッサンとは描いた絵が目の前のモチーフに近づいてきたという実感を得る事」と考えているそうです。

最後にデッサンを額に入れて完成です!

リンゴのつるつるした表面、赤さ、丸さ、肩がふくらんでお尻はスマートになっているフォルムなどよく観察されていて、立体感も意識されたデッサンが出来上がりました。




大人のためのアトリエ講座「金継ぎ入門 欠けた器を漆でなおす」開催レポート

2019.3.5

村田優香里さんと坂本恵実さんによるユニット“うるしさん”を講師に迎えて「金継ぎ入門欠けた器を漆でなおす」が開催されました。

初回:1115

はじめに、スライドを見ながら漆についてのレクチャーを受けました。

漆の樹から取れる樹液は生のままだとほとんどの人がかぶれてしまいますが、固まるとかぶれ成分がなくなります。そういえば、多くの方が漆塗りのお椀で味噌汁を飲んでも大丈夫ですね。

今回は参加者の方がそれぞれ持参した器の欠けを金継ぎで直していきます。

作業の前に、うるしさんのデモンストレーションがありました。

まず、器の欠けの周りをマスキングテープで覆います。

ここから漆を扱うのでかぶれ対策でゴム手袋、アームカバー、エプロンを着けます。

器の欠けの断面にエタノールで薄めた生漆を塗ります。

ひび割れがある器は、この工程でひび割れにも染み込ませて水漏れしないようにします。

生漆はすぐにふき取ります。

いよいよ器の欠けを埋める作業です。埋める材料はサビといって砥の粉と水を練って生漆を混ぜたものを使います。サビをヘラで盛って欠けた部分を形作ります。

漆風呂に入れてこの日は終了です。漆風呂とは温度と湿度を保つためのもので今回は段ボール箱にヒーターと濡れ布巾を入れたものを使います。

2回目:1122

先週付けたサビが固まっているので凸凹をカッターで削ります。

器の表面より0.2㎜くらい盛り上がるように新たなサビをつけます。

サビは固まると痩せます。その分を考慮して付けるとよいそうです。

作業が終わったら漆風呂に器を入れます。


3回目:1129

先週つけたサビを器のかたちに沿ってカッターで完成形に削ります。

初日に付けたマスキングテープを目印にすると器の欠けの大きさが分かりやすいです。

次に1000番目の耐水ペーパーで表面をつるつるに研ぎます。

生漆をエタノールで薄めたものを筆で塗り、染み込ませます。

10分ほど漆風呂に入れて固めてから黒呂色漆(くろろいろうるし/黒い顔料を混ぜた漆)を塗ります。

厚く塗ると表面だけ乾いて皺ができるので薄く塗ります。

4回目:126

1500番目の耐水ペーパーで漆の表面がマットになるまで研ぎます。次は弁柄漆(酸化鉄を混ぜた赤色の漆)を薄く塗ります。

漆風呂に入れて35~45分待って少しだけ固めます。これを「乾口(ひくち)をとる」というそうです。

固まるのを待つ間に最後の金粉仕上げにむけ、銀粉で蒔き方の練習をします。

鮮やかな赤だった弁柄漆が固まり始めると沈んだ赤になります。

よいタイミングになったら、いよいよ金粉を蒔きます。

真綿を小さく丸めたもので金粉を取って赤漆の真上でトントンと指ではじいて金粉を落とします。

全体に金粉が乗ったら余計な金粉を真綿でそっと払い落します。

次に金粉を蒔き詰めます。先ほど蒔いた金粉ではまだ隙間があるのでさらに金粉を蒔いて真綿で押し込みます。

そのあと息を吹きかけて真綿でクルクルと円を描くように磨くと金が輝きます。

漆風呂に24時間以上入れて固まれば完成です!

うるしさんのデモンストレーションとアドバイスは初心者にも分かりやすく、道具や材料が準備されているので金継ぎが気軽に体験できたと思います。

自分で直した器は、持ち帰ってからも日常に使って楽しめそうですね。

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