大人のためのアトリエ講座「手製本でつくる糸綴じのスケッチブック」開催レポート

2026.1.7

2025年1221日(日)、製本家の本間あずささんを講師にお迎えし、大人のためのアトリエ講座「手製本でつくる糸綴じのスケッチブック」を開催しました。15名の参加者が、自分の手で紙を折り、糸で綴じる「手製本」の工程を体験しました。当日の様子をご紹介します。

 

講座の様子

講師の本間あずささん

 

講座は、本間さんによるレクチャーからスタートしました。ヨーロッパで古くから受け継がれてきた「手製本」は、手作業の積み重ねによって紙の束を1冊の本に仕立てていく技術です。製本工芸や工芸製本、フランス語でルリユール(reliure)とも呼ばれ、一人の製本家がデザインから制作までを一貫して担う点も大きな特徴です。レクチャーでは、こうした手製本の成り立ちや、工業的に大量生産される製本との違いについて、具体例を交えながらお話しいただきました。

 

レクチャーの様子

 

手製本で本をつくることは、手でのアプローチを深めていく時間。自分の手でつくることで、本との関わり方を増やしていく——そんな本間さんの言葉が印象的でした。

 

紙を折ってみると…

 

続いて、本の構造についての説明へ。紙には繊維の流れ目である「紙の目」があり、その方向によって折れやすさや、本の開きやすさが変わります。実際に紙を曲げてみると、その違いは一目瞭然。「本では必ず、背に平行に紙の目を揃えます」という説明に、参加者の皆さんも感心した様子で耳を傾けていました。

 

 

本文紙には、真っ白な「モデラトーンGAホワイト」と、ややクリーム色がかった「リ・シマメ」の2種類を使用しました。同じ「白」でも、微妙な色の違いが感じられます。表紙の灰色の紙には、本間さんの手によって金色の「sketch book」の文字が箔押しされています。

 

 

本文紙を折る工程では、牛の骨でできた製本用のヘラを使用しました。紙の角を丁寧に揃え、ヘラで折り目をつけていくと…平らな紙が、本らしい形に変わってきました。

 

 

洋本では「折丁(おりちょう)」と呼ばれる紙の束を基本単位として、ページを構成します。今回は厚みのある紙を使用するため、8ページを一折とする折丁にしています。折丁の順番を考える工程では、白とクリーム色の紙がどのように見えるかを想像しながら、それぞれ思い思いに組み合わせを考えます。選択肢の多さも、手製本ならではの楽しさですね。

 

 

希望者は、端紙を一折につき1枚ずつ加えることもできました。カラフルな紙や透ける紙など、さまざまな種類が並び、どれにしようか迷う時間もまた、楽しいひとときでした。

 

 

次に、表紙と本文紙を貼り合わせる工程に進みました。両面テープを使って、表紙と本文紙の背の位置を丁寧に合わせて接着していきます。このときも、本文紙を折る際と同じようにヘラを使い、折り目がずれないよう慎重に折り曲げていきました。

 

本らしくなってきました!

目引きの様子

 

表紙と本文紙を貼り合わせたあとは、糸を通すための穴を目打ちであける「目引き」と呼ばれる工程です。今回は約1mmの小さな穴を、背の部分に6か所あけていきました。穴の位置が揃っていないと、綴じたときの仕上がりにも影響が出るため、参加者の皆さんは慎重に作業していました。

 

 

目引きが終わると、いよいよ綴じの工程へ。製本では、綴じるために麻糸を使用します。糸には蜜蝋を塗り、毛羽立ちを抑えてから使用します。

 

針は先の丸い製本用のもの。紙を傷めないよう工夫されています。

 

 

今回は「フレンチリンクステッチ」という綴じ方で制作しました。背に網目のような糸の模様があらわれるのが特徴で、ページがフラットに開きます。スケッチブックとして使いやすいよう、本間さんがこの綴じ方を選んでくださいました。

 

フレンチリンクステッチ

 

決まった順番で穴に糸を通し、下の糸をすくっていくと…背にフレンチリンクステッチ特有の模様があらわれてきました。

会場には、紙の擦れる音と糸を引く音だけが響き、参加者の皆さんは真剣な眼差しで、静かに針を進めていました。

 

 

最後に、表紙にリボンを通して…スケッチブックが完成しました!

 

完成!

 

できあがった本を手に、参加者の皆さんは自然と笑顔に。「なかなかできない貴重な経験だった」「とても充実した時間を過ごせた」といった感想も寄せられました。一冊の本を自分の手でつくることで、普段は意識することの少ない「本の構造」や「手仕事の魅力」にあらためて向き合う時間になったのではないでしょうか。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

 

 

 

 

文・箱山朋実(横浜市民ギャラリー エデュケーター)