大人のためのアトリエ講座 開催レポート:「藍の生葉染めをしよう」

2025.6.24

2025年614日(土)、図工家で染色someoaq主宰の柏崎久恵さんを講師にお迎えし、「藍の生葉染めをしよう」を開催しました。16名の参加者が、藍を収穫する夏の時期にのみできる「生葉染め」に挑戦。新鮮な藍の葉を使って絹のストールを染めました。講座の様子をご紹介します。

 

できあがった作品と、講師の柏崎久恵さん

 

 

講座は柏崎さんによるお話からスタートしました。柏崎さんは、さまざまな文化施設や造形教室などで染色やアートを教えており、こどもから大人まで幅広い世代と制作をともにされています。

 

レクチャーの様子

 

今回体験する「藍の生葉染め」は、藍の葉を乾燥・発酵させて染液をつくる「本藍染め(発酵建て)」とは異なり、新鮮な葉を水の中でもみ出して染液をつくる方法です。夏の空のような、明るい水色に染まるのが特徴で、絹などの動物性繊維のみ染めることができます。

 

今回使用する藍は、柏崎さんが育てたもの。摘みたてを持ってきてくださいました

 

お話のあとは、いよいよ藍の生葉染めを体験します。まずは、今回使用する藍の葉と茎を分ける作業から始まりました。テーブルを囲んで作業しながら、参加者同士で自己紹介。「最近食べて美味しかったもの」をテーマにお話しいただくと、会場の雰囲気も徐々に和やかに。葉をちぎる音と、楽しげな笑い声がアトリエに満ちていました。

 

「プチッ」と葉をちぎる感触も楽しい!

 

葉の仕分けが終わると、次は染液づくり。水を入れた容器に葉を入れ、ネットの中でもみ出していきます。葉の中に含まれる「インディカン」という成分が、もむことで「インディゴ」という青色の色素に変化します。

 

ネットの中に藍の葉を入れ、よくもみます

 

力を込めて葉をもみ出すと、水が濃い緑色に変化していきます。

 

葉の爽やかな香りや、ほんのりぬるっとした感触も印象的でした

柏崎さん「このときの色や匂いをよく覚えておいてくださいね」

 

染液ができたら、いよいよストールの染色です。染液に浸し、空気に触れさせる作業を数回繰り返すと、ストールの色が少しずつ変化していきます。はじめは緑がかった色だった布が、次第にターコイズブルー、そして青色へと移り変わっていく様子に、参加者も思わず見入っていました。

 

染液にストールを浸します。うまく染まるか、緊張の瞬間!

はじめは緑色…

ほんのり青みがかった色味に変化してきました

染め終わりました!

 

染め上がったストールは水でよく洗ってから、タオルで水気を取り、細かな葉をふり落としてから干します。

 

水でよく洗って…

細かな葉をふり落とすと…

完成!!

 

全員の作品を並べて干すと、同じ分量の葉を使っているのに、それぞれ微妙に異なる色合いに仕上がっていました。「葉をもみ出す時の手の温度や力加減で、少しずつ色が変わるんです」と柏崎さん。機械を使わず、手で丁寧にもんだからこその個性ある色の違いを、皆さん興味深そうに見比べていました。

 

爽やかな青色に染まりました

 

制作後は、藍や草木染めについてのレクチャーをしていただきました。日本で古くから親しまれてきた藍には、薬効や防虫など様々な効能があります。けれど染めるのに手間がかかるため、化学染料の登場以降、藍染めの産業は衰退してしまったそうです。

 

柏崎さんが染めた、さまざまな草木染の色見本を見せていただきました

 

実際に化学染料で染めた布と藍染めの布を見比べるクイズもありました。誰も正解しなかったほど、まったく見分けがつかない仕上がり。安価で手間が少ない化学染料が広まった背景を、体感的に理解する機会となりました。

 

この5枚のうち、一番左の作品のみ化学染料で染めたもの

 

最後は、自分の作品を手に写真を撮ったり、さっそく巻いて帰る方も。「無心になれるくらい夢中になれた」「楽しかったので、ぜひまたやってみたい」との感想も多く寄せられました。この講座を通して、藍の魅力や、自分の手で染める楽しさを存分に感じていただけたのではないでしょうか。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

文・箱山朋実(横浜市民ギャラリー エデュケーター)