版画家の北嶋勇佑さんを講師にお迎えし、「色を楽しむ!油絵具でモノタイプ版画」を2025年6月1日(日)に開催しました。17名の参加者が、モノタイプ※に挑戦。偶然のにじみやかすれも楽しみながら、世界に一枚だけの作品づくりに取り組みました。講座の様子をレポートします。
※モノタイプとは、版となる板の上に油絵具やインクで絵を描き、それを紙に刷り取る版画技法です。版から同じイメージが一度しか刷れないことが特徴です。

モノタイプ制作の様子
講座は北嶋さんによるレクチャーからスタートしました。北嶋さんは「Art is Happy!」をテーマに、動植物などをモチーフにした親しみやすい作品を多く手がけています。ご自身の作品紹介とともに、木版画とモノタイプを組み合わせた“木版モノタイプ”という北嶋さん独自の技法も紹介してくださいました。

講師の北嶋勇佑さん

北嶋さんの木版モノタイプ作品。版木を彫ったあとに筆で油絵具をのせ、紙を重ねてこすり、イメージを紙に刷りとります。
さらに、モノタイプの歴史についても解説していただきました。17世紀にイタリアのジョヴァンニ・ベネデット・カスティリオーネが制作したモノタイプが最も古く、作品は現在でも保存されています。その後、19世紀にはドガやゴーギャン、20世紀にはピカソやマティスなど、さまざまな著名な作家たちがこの技法を用いて作品を制作してきました。
日本のモノタイプでは、当館の収蔵作家である一原有徳を紹介。コレクション作品の《SON 88》についても解説していただきました。
※一原有徳《SON 88》の作品詳細はこちらをご覧ください。

モノタイプの幅広い表現に触れる時間となりました。
レクチャーのあとは、いよいよ制作です。今回は正方形のアクリル板を版に使い、筆で油絵具をのせて描いていきます。「まずは丸や四角、三角などシンプルな形から始めて、どんどん刷ってみてください」と北嶋さん。絵の具をのせたアクリル板に紙を重ね、手で撫でるように紙をこすると…描いたところがそのまま紙に転写されます。

アクリル板に好きな色の油絵具で絵を描いて…

紙を重ねて、手でこすると…

モノタイプができました!
筆跡がうまく出ない人には、「絵の具は多めに、こする力は優しく」と北嶋さんがアドバイス。力を入れすぎると絵の具が潰れてしまうため、力加減がポイントになります。最初は慎重に進めていた参加者たちも、徐々にコツをつかみ、思い思いの色や形を試していきました。

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今回は3種類の紙を用意し、 白と黒の上質紙(特厚口)に加え、版画用紙「かきた」も使用しました。紙の色や質感によって、仕上がりの印象が大きく変わることを体感していただきました。

絵の具が潰れたり、紙の上で混ざったり…偶然できた表情も魅力的!
集中してたくさんの作品を刷りあげていく参加者の皆さん。刷った紙にさらに別のイメージを重ねて刷る、位置をずらしてみるなど、表現の可能性を試す姿も見られました。

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制作後は、できあがった作品を机に並べて、他の参加者の作品も鑑賞し合いました。使う色や筆づかいによってまったく異なる雰囲気の作品が生まれることに、驚きと感嘆の声が上がりました。

鑑賞タイムの様子

北嶋さんが、作品の面白いところを解説してくれました。

参加者の作品

参加者の作品
参加者からは「夢中になって作れた」「また自宅でもやってみたい」との感想が寄せられました。今回の講座を通して、モノタイプの魅力を存分に感じていただけたようです。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!