横浜市民ギャラリー4階にあるアトリエでは、幼児・児童を対象とする造形講座「ハマキッズ・アートクラブ」を実施しています。2024年度最後の講座として、3月2日(日)には「横浜市民ギャラリーまるごと探検ツアー」を開催し、小学3~5年生6名が参加しました。講師は横浜市民ギャラリー学芸員/エデュケーターの河上祐子です。
この講座はハマキッズ・アートクラブ全10講座のうちで唯一保護者の付き添いや見学がなく、子どもだけでおこないます。いつもとは違った緊張感の中、講座が始まりました。
今回の参加者は、市民ギャラリーに来たことがある子も、初めて来る子もいました。そして昨年度もこの探検ツアーに参加してくれたリピーターも!「前回がすごく楽しかったから、もっと知りたくて来ました」とのこと。嬉しい限りです。
この講座では、「横浜市民ギャラリーコレクション展2025 コレクションの地層」を鑑賞するほか、普段は入ることのできない収蔵庫などのバックヤードを探検します。「市民ギャラリーってどんなところ?」「お客さんが入るところ以外には、何があるの?」「絵や彫刻は、どんなふうに管理しているの?」など、横浜市民ギャラリーの裏側や学芸員の仕事をまるごと探検します。
まずは建物の外に出て、外観を見てみます。「違う建物がくっついているみたい」という意見が出ました。
その通り!この建物はもともと、研修や宿泊のできる「いせやま会館」という横浜市の施設でした。現在の入口の部分は「横浜市民ギャラリー」へと改修したときに増築された部分なので、建物の大部分とは違っているのです。
「増築されたところは、横浜らしいあるモノがモチーフになっています。何かわかるかな?」という問題が出されると、「船に乗ってるコンテナ」と即答でした。
そして、お客さんの出入りするところとは別にある職員通用口からバックヤードに入り、警備室も見学。監視カメラに「うちの車が映ってる!」と見つけた子も。建物の中も外も、事故など危ないことがないかを、警備員さんが見てくれているのです。
そしていよいよ、全員が楽しみにしていた収蔵庫へ。「市民ギャラリーの職員以外でここに入れるのは、年に1回の探検ツアーに参加した子どもだけ。みなさんは特別ですよ」と言われ、ドキドキと期待感が高まります。
収蔵庫に入ると「箱がいっぱい!」「これ全部作品が入ってるの?」と初めて見る光景にびっくり。市民ギャラリーにはおよそ1,300 点の作品が収蔵されています。「全部の作品に目を通すのはとても大変だけど、少しずつ、順番に点検をして、作品に変わったところがないかを確認しています。作品を次の世代にも残すため、修復が必要かどうかを判断するのも、学芸員の大事な仕事です」という説明を受け、理解が深まりました。その他にも棚に入れた作品が地震で飛び出さないようにする工夫や、温湿度を管理する記録計などを見て、作品の管理方法についての様々な工夫を学びました。
また、コレクション展で展示中の作品の保管箱(空き箱)がまとめられているのを見て、「こんなに大きな箱に入っているのはどんな作品だろう」という声も。展示室で確かめましょう。
「横浜市民ギャラリーコレクション展2025 コレクションの地層」は、先ほど収蔵庫で見たたくさんの作品の収集過程に着目した展覧会です。横浜市民ギャラリーの開館は1964年。参加者の子どもたちが生まれるずっと前に、どのようにして作品が集められていったのかにも注目です。
展示室に入る前に、展示室でのやくそくごとを確認。走らないこと、作品に触らないように少し距離をとって鑑賞すること、おしゃべりの声は少し小さくすることなどに気をつけながら鑑賞します。
収蔵庫で見つけた大きな箱に入っていた作品はこちら。高さが200.8cmあります。
海中の世界を描いたこの作品では、「魚たちが追いかけっこしているみたい」「ゆったりした雰囲気がするから、追いかけっこじゃなくてかくれんぼかも」など話が弾みました。
丸い球状の作品は、タイトルに《擬態》とあります。「なんでこのタイトルをつけたのだろう」と興味津々。
「何を表しているのか分からないようなものに出会うのも、美術のおもしろさの一つ。正解はないから、自由に考えてみて」と言われ、「丸まったダンゴムシ」「カボチャ?」「中に何かいるのかも」などめいめいに考えました。
赤レンガ倉庫付近を描いた作品を見て「今の景色とは違うよね?」とすぐ気が付いたのはさすが。1971年に描かれた作品です。
絵画とは思えないほど細部までそっくりに描かれており、写真みたいに絵が描けるなんてすごい!と驚いていました。
「漫画」と聞いて思い浮かぶものとは違った形式の「1コマ漫画」。これらの作品は、横浜市民ギャラリーで1978年に開催された「ヨコハマ漫画フェスティバル」において、漫画家らによって現地制作されました。横浜をテーマにしながら、ものごとを面白く伝えるユニークな表現を楽しみました。
横浜の風景を捉えた写真には、タイトルによく知った地名が入っているものも。
「自分だったらどんな写真を撮る?」という問いかけには「飼っている犬が歩いているところを撮りたい」と答えてくれました。
見学を終えてアトリエに戻り、今日の感想を話し合いました。「普段は見られない裏側の探検がおもしろかった」「絵をどのように管理しているのかを知れた」という意見のほか、「みんなで展示を見れて楽しかった」という意見もありました。自分一人で見て考えるのも楽しいですが、他の子が気づいたところなどを教えてもらうと、新たな発見があったり、自分の考えが深まったりします。
お迎えに来た保護者の方に、今日学んだことをさっそく話す姿がとても楽しげでした。
これからも、いろいろな美術館や展覧会に行ってみてくださいね。
ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。