仲間と分かち合う学び 横浜市民ギャラリーコレクション展2026「鑑賞サポーター」活動レポート

2026.5.2

「横浜市民ギャラリーコレクション展2026 戦後をあゆむ」にあわせ、「鑑賞サポーター」(ボランティア)を募集し、14名の方々に活動いただきました。3回の研修を経て、会期中に来場者と作品について自由に会話する「おしゃべりの日」を開催。その模様をレポートします。

「おしゃべりの日」の様子

 


第1回研修 まずは、鑑賞を楽しむ

 

研修初日。初めての顔合わせに、会場はすこし緊張した雰囲気が漂っていました。
それぞれの自己紹介の後に、まずはボランティア自身が鑑賞者として作品を楽しむ時間を設けました。

第1回研修の様子

コレクション展の出品作品の一点を投映して全員で見ながら、感じたことや考えたことを一つひとつ言葉にしていきました。
30分ほど時間をかけて隅々まで見ていくと、初めは見落としていた細かい部分や、新しい発見が次々と出てきます。

第1回研修の様子

次に、それぞれが第一印象で選んだ作品の図版を元に、二人一組になって30分ほど作品について話す時間を設けました。
ここまでは、作品のタイトル、作者などの情報や、それらに関する知識を前提とせずに、目の前にある作品にじっくり向き合うことを大切にしました。

第1回研修の様子

この日の最後には、コレクション展の出品リストを共有し、その中から一人一点気になった作品を選び、次回の研修までにその作品について調べたことを1枚のレポートにまとめてくることを課題としました。

 


第2回研修 知識を得て、作品と向き合う

 

前回、メンバー同士でたっぷりとお話する時間があったためか、2回目の研修ではだいぶ打ち解けた雰囲気になりました。

第2回研修の様子

この日は3グループに分かれ、各自が調査してきた作品図版を机の上に並べ、グループ内で発表をおこなうところからスタートしました。
作品に描かれた/写された対象、その主題、作者の経歴等に加え、自身がその作品から感じたこと、考えたことなども共有し合いました。

第2回研修の様子

その後、グループの机に二人がサポーター役として残り、他のメンバーはお客様役として別のグループの机に出かけていき、作品図版を見ながら対話する時間を設けました。
サポーター役は前半の発表で得た知識も踏まえて、お客様の感想や意見を引き出す役目を担います。

第2回研修の様子

30分くらい経ったところで、サポーター役とお客様役の役割を交代して同じことを繰り返しました。

第2回研修の様子

二度の体験を元に、対話しながら鑑賞して気づいたことを全体で話し合いました。
「サポーター自身がしゃべりすぎない方が会話が弾む」
「相手の質問に答えるのではなく、一緒に考える姿勢が大切」
など多くの意見がでました。

最後に、各自が作成してきたレポートをコピーして全員に配り、次回までに目を通しておくことをこの日の課題としました。

 


第3回研修 作品に対面し、最後の実践練習

 

本番前最後の研修です。
これまでの研修はコレクション展が開幕する前だったため、作品図版のコピーや投映した図版を用いてきましたが、この日はやっと実際の作品に対面することができました。

第3回研修の様子

まずは、展覧会場をざっと一回りして、コレクション展の全容をつかむところからスタート。
サポーターの皆さんは、調査を進めてきた作品を目の前に感慨もひとしおといった様子でした。

第3回研修の様子

その後、「おしゃべりの日」本番に向けての実践練習をおこないました。
アトリエの中に疑似的な展示室をつくり、①サポーター役、②お客様役、③観察役に分かれたロールプレイングをおこないました。

第3回研修の様子

役割を入れ替えて三度おこなった後、実践してみた感想や、本番に向けてどんなことに気を付けたいかについて全員で意見を交わしました。

 


「おしゃべりの日」本番

 

3回の研修を経て、いよいよ「おしゃべりの日」の本番を迎えました。
以下のように担当を割り振り、2日間に計3回開催しました。

・ 3/1午前 6
・ 3/1午後 4
・ 3/8午後 6

「おしゃべりの日」の様子

鑑賞サポーターは、会場入口に設けた「おしゃべりステーション」や、展示室の各所に待機し、来場したお客様に「気になった作品はありますか?」「ぜひ感想をお聞かせください」などとお声をかけ、対話を進めました。

「おしゃべりの日」の様子

お客様はおしゃべりしながらの鑑賞を楽しみ、時にご自身の思い出を語ってくださることもありました。
作品や展覧会の感想をメッセージにして残してくださった方も多くいらっしゃいます。

「おしゃべりの日」の様子

最後に、鑑賞サポーターのメンバーが活動終了後のレポートに記した感想や意見をご紹介します。

 


【研修について】

・他の鑑賞サポーターの方々からも事前の研修の中で、それぞれの作品についての感じ方をお聞きする中で、自分が気付かなかった視点に気づかせていただいたことも何度かあり、有意義な時間になりました。

・美術館には比較的行くほうですが、今回のようにこれだけ作者について調査ができたのは、人生でも初めてだったかもしれません。

・事前研修がとても丁寧で、研修のレジュメに沿っていくうちに、仲間との交流も生まれ、なじみのなかった作品や、それまであまり興味を抱かなかった分野の鑑賞のヒントをいただいたり、私にとってとても有意義なものとなりました。

・作品について調べたり、それをメンバーで共有したり、学芸員の方々からの作品情報であったり、それら全ての知識を通して考えたり、作品への理解を深める作業はとても面白いものでした。今後、鑑賞者として、その視点も大切にしていきたいと思います

 

【おしゃべりの日について】

・当日は、来館者の作品に対する真摯な鑑賞に、心地良い緊張感を持って活動出来ました

・途中で「鑑賞サポーター≒おしゃべりサポーター」であると思い直して軌道修正をし、「この作品についてお客様のご感想をぜひ聞きたいのですが」という導入に変え、聞き役としてお話がしやすい雰囲気作りに努めました。その結果、お客様の方からご質問をいただく機会が増え、研修でチームメンバーと調べた作品知識を活用することもできました。

・作品に触れることで、ご家族との思い出や溢れる思いを語ってくださった方、写真や漫画から戦争の実態を新たに知り得たと仰ってくださった方、今回は戦争を知るという目的で来場された方々も多くいらっしゃっていたように感じました。

・「おしゃべりの日」に実際に来館者の方へお声がけする際は、はじめ少し緊張もありましたが、みなさん気軽に応じてくださり、数回のやり取りを重ねるうちに自然と緊張も解けていきました。作品を前に対話を重ねる中で、見方や感じ方が人それぞれであること、対話を通して鑑賞の楽しさが広がっていくことを実感しました

・戦後の横浜を題材にした今回の展示では、「懐かしい」「昔はここに砂浜があった」「胸の内側から当時を感じる」といった言葉とともに、来館者の方がご自身の記憶や体験を語ってくださることもありました。作品が人の思い出や地域の歴史とつながっていることを、あらためて感じて知る機会となりました。作品を通して横浜の記憶や時間に触れながら、お子様から学生、シニア世代まで幅広い年代の方と対話できたことは、私にとって大変貴重な経験となりました。

「おしゃべりの日」の様子

【活動全体について】

・この活動を通じて他者とよりよく知り合う事が大切と感じました

・美術館の使命の一つである市民への社会教育という観点から、この鑑賞サポーターの事象を考えるとその取り組みが、積極的なものであり、さまざまな試行錯誤を経て今まで続いて来ていると思われます。それらが人々に与える影響を評価し、今後のさらなる発展を期待しています。

・今回のような社会や歴史への接点から構成された展覧会では、中にはもっと深く作品を理解したい、当時の横浜の状況をもっと深く知りたい、という意欲をもって来場された方もいたように感じました。そこでは、一緒に感想をおしゃべりしましょうということでは、物足りなかった方もいたのではないか、と少し気になりました。

・研修を受けていくうちに単なるボランティアではないということに気づきのめり込んでいきました。生涯学習といえるでしょうか、作品からも、同じサポーター仲間からも学ぶことが多く、全て初体験のことばかりでした。自分が選んだ作品の他に展示される全ての作品の鑑賞、来場者様との会話の練習、今回のコレクション展のイベントの一つである「おしゃべりの日」の目的達成のために頑張りました。

 

【展覧会や個別の作品について】

・「戦後をあゆむ」のタイトルは大変インパクトが強く英語のPathでは表しきれないものを感じました。そうだ、われわれは戦後を歩いているのだ、それを決して戦中にしてはならないのだ、と思いました。

・今回の展覧会の作品で、懐かしくて胸がつまった作品がありました。「ラバウルばあさん」という写真です。父が酔っぱらってラバウル小唄をよく歌っていたのを思い出し、思わずラバウル小唄を歌いだしそうになり、一番の歌詞をほぼ覚えていることに自分でもびっくりしました。人はこんな時に、湧き上がる想いをそばにいる人に語りたくなるのだろうなあと実感しました。

 


 

それぞれの言葉からは、この活動を通して一人ひとりが得た豊かな時間や学び、本活動の意義や課題が浮かび上がってきます。
今後も横浜市民ギャラリーでは、所蔵作品という市民の財産を活かしながら、豊かな学びの場を開いていきたいと思います。
鑑賞サポーターの皆様、「おしゃべりの日」にご参加くださった皆様、どうもありがとうございました。

「おしゃべりの日」の様子

文・森 未祈(横浜市民ギャラリー 主任学芸員・主任エデュケーター)