新・今日の作家展2022 世界をとりとめる New “Artists Today” Exhibition 2022: We Catch the World

概要

「新・今日の作家展」は、横浜市民ギャラリーが開館した1964年から40年にわたり開催した「今日の作家展」を継承し、同時代の作家の作品を紹介することでその表現を考察しています。
今年の副題は「世界をとりとめる」です。世界とは、地球上のすべての国家や地域を指すとともに、自分が認識している社会や世の中、また自分が自由にできる特定の範囲も意味します。いずれの意においても、世界の成立にはそれを認識する自分という主体が不可欠な一方で、自分自身がその構成要素の一つであるといえます。そして、世界は時とともに移ろい変化し続けています。本展では、そのような世界のひと時に眼を向け、制作する3名の作家を紹介します。
詩人の大崎清夏は、平易かつ印象的なことばを用い、自身の体験や思いを反映しながらも、読み手個々に情景や記憶を喚起させるような作品を発表しています。小林達也は、描く行為の中で生まれる色面や形象から受ける自身の内面の動きを画面に還元し、カゼインテンペラやアクリル絵具等を用いて絵画を制作しています。日本画材で制作する古山結は、矩形にとらわれない支持体の制作や描写、時に絵具を削り取る行為等を通じて日々の物事や出来事を整理するように表します。彼らの作品に接し何等かの揺動を得ることが、私たち自身の世界の再認識へと繋がるかもしれません。

大崎清夏《パサージュ》2021年/アクリル板、カッティングシート、木材/デザイン協力:Cat

《I/O》2021年/インスタレーション:毛利悠子/詩:大崎清夏/映像:玄宇民 (c) Yuko Mohri / Photo by Kenshu Shintsubo

小林達也《星がある》2021年/パネルに寒冷紗、建材パテ、カゼインテンペラ、アクリル、クレヨン、色鉛筆/272.0×362.0㎝

小林達也《大きな線 もしくは星》2021年/パネルに寒冷紗、建材パテ、カゼインテンペラ、アクリル、鉛筆、色鉛筆、マジック、クレヨン/272.0×240.0㎝

古山結《唄い群れ》2022年/木製パネル、和紙、岩絵具、水干絵具、膠/130.3×130.3㎝

古山結《探さないでください》2022年/木製パネル、下地材、岩絵具、水干絵具、膠/23.7×23.7㎝

日程

開場時間

(入場は17:30まで)

休館日
会期中無休
入場料
入場無料
会場

横浜市民ギャラリー 展示室1、B1

〒220-0031 横浜市西区宮崎町26番地1

主催
横浜市民ギャラリー(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団/西田装美株式会社 共同事業体)

関連イベント

仕草のドローイング「動きのなかにあることば」

古山結×小山衣美(ダンサー)

小山衣美が展示作品に呼応したダンスを即興で踊り、古山結がドローイングします。

2022年9月19日(月・祝)  14:00~14:30 
会場|展示室1

※参加無料

※観覧自由(申込不要)。ただし混雑時は入場制限を行います。

※パフォーマンス中、一部の作品が鑑賞しづらくなる場合があります。

対談「私たちは、星だろう」

小林達也×田中龍也(群馬県立近代美術館学芸員)
2022年9月24日(土)  14:00~15:30(開場 13:40) 
会場|4階アトリエ

定員|先着30名 

※参加無料、申込不要

対談「生き延びるための遊び」

大崎清夏×永井玲衣(哲学研究者)
2022年9月25日(日)  14:00~15:30(開場 13:40)  
会場|4階アトリエ

定員|先着30名 

※参加無料、申込不要

学芸員によるギャラリートーク

2022年10月2日(日)  14:00~14:30

会場|展示室1、B1

※参加無料、申込不要

作家プロフィール

撮影:黒川ひろみ

大崎清夏 OSAKI Sayaka
1982年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2011年、ユリイカの新人としてデビューし、第1詩集『地面』を刊行。詩集『指差すことができない』(青土社)で第19回中原中也賞受賞、『踊る自由』(左右社)で第29回萩原朔太郎賞最終候補。その他の著作に散文集『目をあけてごらん、離陸するから』(リトルモア)ほか。横浜市民ギャラリーでは「新・今日の作家展2022 世界をとりとめる」に詩人として初めて出展。
(2023年8月16日 更新)
小林達也 KOBAYASHI Tatsuya
1973年神奈川県生まれ。1998年筑波大学大学院芸術研究科美術専攻修了。自作のパネルに、カゼインテンペラを主としてアクリル絵の具や色鉛筆、クレヨン等多彩な画材を用いて制作をおこなう。主な個展に「大きな線 もしくは星」(2021年、GALERIE PARIS/神奈川)、「立って歩く」(2009年、トーキョーワンダーサイト本郷/東京)、グループ展に「桐生のアーティスト2020」(大川美術館/群馬)、「VOCA展2007」(上野の森美術館/東京)、他多数。
(2022年7月13日 更新)
古山結 FURUYAMA Yui
1991年愛知県出身。2021年東京藝術⼤学⼤学院美術研究科博⼠後期課程美術専攻⽇本画領域修了、博士号取得。自身で制作する矩形にとらわれない支持体に、日本画材を用いて制作する。主な個展に「端境に立つ」(2022年、ts4312/東京)、「近接遠眺」(2022年、CLEAR GALLERY TOKYO)、グループ展に「シェル美術賞2020」。2018年、東京藝術大学大学院修士課程修了制作作品大学美術館買上げ。シェル美術賞2020入選。
(2022年7月13日 更新)
小山衣美 OYAMA Emi
広島県出身。8歳から18歳まで新体操を、18歳よりコンテンポラリーダンスを始める。 フリーダンサーとして東京芸術祭や瀬戸内国際芸術祭、大地の芸術祭などに出演。 国際交流の一環でアジアでの公演やワークショップにも参加しており国内外で活動中。
(2022年7月13日 更新)
田中龍也 TANAKA Tatsuya
1971年生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業後、1998年より群馬県立近代美術館学芸員。近年の主な企画展に「群馬の美術2017-地域社会における現代美術の居場所」(2017年)、「長島有里枝×竹村京「まえといま」」(2019年)、「絵画のミカタ-5人のアーティストとみる群馬県立近代美術館のコレクション」(2020年)。
(2022年8月15日 更新)
永井玲衣 NAGAI Rei
学校・企業・寺社・美術館・自治体などで哲学対話を幅広く行っている。D2021メンバー。著書に『水中の哲学者たち』(晶文社)。詩と植物園と念入りな散歩が好き。
(2022年7月13日 更新)

開催レポート

「新・今日の作家展2022」は“世界をとりとめる”を副題に、詩人の大崎清夏さん、画家の小林達也さん、古山結さんが出品し、開幕時は30件34点を展示しました。
大崎さんはTwitterで呟いてきた詩「私は思い描く」をB1展示室奥のスペース・3面の壁面にカッティングシートを用いて展開するとともに、アーティストの毛利悠子さんらとつくった映像作品《I/O》、新作の《ここで》で会場を構成しました。言葉を用いて表現する詩人の参加は前身の「今日の作家展」時代(1964~2006年)も含めて初めてでした。展示室で見て・読み・体感する、本とは異なる形で提示される詩が、見る人それぞれにイメージや記憶を想起させる空間となりました。カゼインテンペラという技法を用いて制作する小林さんは、同じくB1展示室に新作を含む大型絵画6点を展示しました。主題を決めず、作品自身がなりたい様を探り制作したという画面はいずれも多くの色彩で埋め尽くされたものでした。長い時間をかけ描かれた作品はそれぞれ異なる表情を持ち、大作が居並ぶ様は壮観でした。制作と並行して小林さんが思索した内容から導かれたタイトルも印象的で、想像を掻き立てました。古山さんは1階展示室に、様々な大きさ・そして形状の作品を25点展示しました(当初)。日本画材を用いながらも、支持体を削る、画面を引っ掻く等独自の手法を取入れた制作は、古山さんが自らの身体で体験した物事を整理する過程と呼応しているといいます。物語性を感じさせるものや、絵具の素材感が際立つもの等、やはり印象的なタイトルと相まって、見る人それぞれが作品を起点とした世界を紡ぐような空間となりました。
関連イベントは、大崎さんは哲学研究者の永井玲衣さん、小林さんは群馬県立近代美術館学芸員の田中龍也さんと対談し、出品作品やその背景にあるものを掘り下げる内容となりました。古山さんはダンサーの小山衣美さんとパフォーマンスをおこない、制作されたドローイング5点は会場に追加展示しました。

※関連イベントのうち、対談の書き起こしは「記録集」でご覧いただけます。
※仕草のドローイング「動きのなかにあることば」は記録映像を公開しています。

 

[展覧会データ]
新・今日の作家展2022 世界をとりとめる
2022年9月17日(土)~10月10日(月・祝)24日間 10:00~18:00
横浜市民ギャラリー展示室1、B1
出品点数 : 31件39点(9/19関連イベントで制作、追加展示したドローイングを含む)
展覧会入場者数3,748名+関連事業参加者数88名=合計3,836名

関連資料