新・今日の作家展2017 キオクのかたち/キロクのかたち New “Artists Today” Exhibition 2017: Compilations of Memories and Records

概要

「新・今日の作家展」は横浜市民ギャラリーが開館した1964年から開催してきた年次の現代美術展「今日の作家展」(〜2006年)の名を冠し、昨年より再始動した現代美術の動向を紹介する展覧会です。 本年は「キオクのかたち/キロクのかたち」をテーマに、土地や歴史の調査、人々へのインタビューなど、自己の外部にあるもの・過去の事物との接触を制作過程に取り入れて作品を発表する作家を紹介します。失われてしまったものや時を経て変化したものの記録、人々の中に息づく記憶が、作家というフィルターを通して作品へとかたちを結びます。また、その作品が新たな記録の役割をも担っていきます。自身のルーツや常識外の現象などへの関心を掘り下げ、多角的に調査しインスタレーションをおこなう久保ガエタン(1988年生まれ)。2012年より陸前高田、2015年から仙台を拠点とし、現地を中心に人々にインタビューを行い制作する映像作家の小森はるか(1989年生まれ)と画家の瀬尾夏美(1988年生まれ)。各地の捕鯨文化や狩猟・漁労文化についてオーラルヒストリーを収集し手工芸やリトルプレスのかたちで発表する是恒さくら(1986年生まれ)。出身地の広島について考察した写真の発表、東日本大震災の被災地を含む日本各地での撮影を通じ、災害から復興を遂げる場所に向き合ってきた写真家の笹岡啓子(1978年生まれ)。記憶・記録へのまなざしは様々です。彼らの作品に触れることは、“いま”や“わたしたち”を見つめ直す契機となることでしょう。

久保ガエタン「僕の体が僕の実験室です。あるいはそれを地球偶然管理局と呼ぶ。」展覧会風景 / 2017年 / Courtesy of the artist and Kodama Gallery

小森はるか+瀬尾夏美 巡回展「波のした、土のうえ」in 盛岡 展覧会風景 / 2015年 / Cyg art gallery

小森はるか+瀬尾夏美《波のした、土のうえ—置き忘れた声を聞きに行く》2014年 / 映像 24分

是恒さくら / 原画刺繍『ありふれたくじら』Vol.1(部分)/ 2016年 / 布、糸 / 撮影=根岸功

笹岡啓子《PARK CITY》2016年 / 顔料インクジェットプリント ©Keiko Sasaoka

日程

開場時間

(入場は17:30まで)

休館日
会期中無休
入場料
入場無料
会場

横浜市民ギャラリー 展示室1、B1

〒220-0031 横浜市西区宮崎町26番地1

主催
横浜市民ギャラリー(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団/西田装美株式会社 共同事業体)
協賛
アサヒビール株式会社
助成
芸術文化振興基金
協力
児玉画廊認定NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター石巻工房
その他

関連イベント

是恒さくらパフォーマンス“『ありふれたくじら』を読む”

2017年9月23日(土・祝)、24日(日)13:00~13:30
会場|展示室B1

※参加無料、申込不要

クロストーク「継承のかたち」

小森はるか+瀬尾夏美×山本唯人(青山学院女子短期大学助教、社会学・空襲研究)
2017年9月23日(土・祝)14:30~16:00
会場|4階アトリエ
※大人のためのアトリエ講座
ヨコハマトリエンナーレ2017応援プログラム

※参加無料、申込不要

対談「1,2,3,太陽!」

久保ガエタン×山川冬樹(現代美術家、ホーメイ歌手)
2017年9月24日(日)14:30~16:00
会場|4階アトリエ

※参加無料、申込不要

クロストーク「爆心地の写真」

笹岡啓子×倉石信乃(明治大学教授、写真史)× 小原真史(映像作家、キュレーター)
2017年10月1日(日)14:30~16:00
会場|4階アトリエ

※参加無料、申込不要

学芸員によるギャラリートーク

2017年9月30日(土)14:00~14:30
会場|展示室1、B1

※参加無料、申込不要

作家プロフィール

©Chikashi KASAI

久保ガエタン KUBO Gaetan
自らのルーツと関わる跡地で「記憶の遠近法」と呼ぶ調査を行うことで、地球の裏側、過去から未来、現実と神話などをリンクし、独自の装置によってそれらを考察した作品を制作している。1988年東京都生まれ。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院修士課程修了。現在パリを拠点に制作中。 個展に2016年「破壊始建設/Research&Destroy」(ICC、東京)、同「記憶の遠近法」(音まち千住の縁、東京)、2017年「僕の体が僕の実験室です。あるいはそれを地球偶然管理局と呼ぶ。」(児玉画廊|天王洲、東京)、グループ展に2012年・2015年「群馬青年ビエンナーレ」(群馬県立近代美術館)、2016年六本木アートナイト等。
(2021年4月1日 更新)
小森はるか+瀬尾夏美 KOMORI Haruka+SEO Natsumi
映像作家の小森と画家で作家の瀬尾によるアートユニット。2011年より協同制作を開始。2012年岩手県陸前高田市、2015年仙台に拠点を移し、 土地との協働を通して記録を行う「一般社団法人NOOK」を設立。小森はるか:1989年静岡県生まれ。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院修士課程修了。 /瀬尾夏美:1988年東京都生まれ。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院修士課程油画専攻修了。 主な展覧会に「3.11とアーティスト|進行形の記録」(水戸芸術館/茨城)、 「Art action UK」(HUSK/ロンドン)、「記録と想起・イメージの家を歩く」(せんだいメディアテーク/宮城)等。 自主企画の展覧会「波のした、土のうえ」、「遠い火|山の終戦」を全国巡回中。
(2021年4月1日 更新)
是恒さくら KORETSUNE Sakura
1986年広島県生まれ。2010年アラスカ州立大学フェアバンクス校卒業。2017年東北芸術工科大学大学院修士課程地域デザイン研究領域修了。 アラスカや東北で先住民、捕鯨文化、漁労文化等のフィールドワークをおこない、造形やリトルプレスを通して異文化間の価値共有の可能性を探っている。主な展覧会に2017年「新・今日の作家展2017 キオクのかたち/キロクのかたち」(横浜市民ギャラリー)等。2018年「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018」参加。
(2021年4月1日 更新)
笹岡啓子 SASAOKA Keiko
広島について考察した写真を発表する一方で、活動最初期から海岸線や火山といった地勢や地表が刻むその土地の過去や経過に関心を寄せて撮影をおこなう。2011年4月以降、東日本大震災の被災地を含む日本各地を撮影し、連続展覧会の開催と小冊子刊行を継続している。1978年広島県生まれ。2002年東京造形大学卒業。 主な個展に「PARK CITY」(photographers’ gallery・東京、2004年から継続開催)、2012年「Difference 3.11」(銀座ニコンサロン、東京他)、2014年第23回林忠彦賞受賞記念写真展「Remembrance」(富士フィルムフォトサロン・東京他)、グループ展に2012年「この世界とわたしのどこか 日本の新進作家 vol.11」(東京都写真美術館)など。写真集に『PARK CITY』(2009年、インスクリプト)、『FISHING』(2012年、KULA)など。
(2021年4月1日 更新)

開催レポート

「新・今日の作家展」第2弾となる2017年は、記憶や記録にフォーカスし作品を発表する作家、4組5名を取り上げました。久保ガエタンさんは自身のルーツを探る過程で出会った歴史的な要素を収集しながら他者の記憶にも接続していくような映像や装置によるインスタレーションを発表しました。映像作家と作家のユニット、小森はるかさんと瀬尾夏美さんは東日本大震災以降、被災地を拠点に人々に話を伺いその様子を撮影する活動を続け、2015につくった物語『二重のまち』をもとに小森さんが映像、瀬尾さんが絵画・テキストを発表し時間の経過を意識させる空間をつくりました。是恒さくらさんは国内外の鯨にまつわる物語を聞き集め、リトルプレスに仕立て発行しています。今回は同書に収録される刺繍も併せて展示し鯨や捕鯨のイメージを一新するような視点をあらわしました。そして笹岡啓子さんは2001年から現在に至るまで出身地の広島・広島平和記念公園を中心に撮影した写真作品を順不同に並べ、同地の歴史の特異性と現在の状況を示しました。
会期中のイベントでは、是恒さくらさんによるリトルプレスの朗読パフォーマンスをはじめ、クロストークや対談がおこなわれ、展覧会の内容をより深く考察する場となりました。会場では、興味深い作品の数々をゆっくりと鑑賞するお客様の姿が多く見られました。

[展覧会データ]
新・今日の作家展2017 キオクのかたち/キロクのかたち
2017年9月22日(金)~10月9日(月・祝)全18日間 10:00~18:00
横浜市民ギャラリー 展示室1、B1
出品点数:41点
展覧会入場者数:4,353名+関連事業参加者226名=合計4,579名

関連資料