収蔵作品 今月の1点

Pinetree  No.102 ©Yokohama Civic Art Gallery

Pinetree No.102 鎌谷 伸一 かまたに しんいち

■ 制作年:1989年
■ 技法・材料:シルクスクリーン
■ サイズ [縦×横×奥行]:51.0 × 71.5cm
■ 作品番号:PR-063
■ 分野:版画

※「横浜画廊散歩」2017年12月号に掲載

鎌谷伸一は1948年、兵庫県生まれ。1966年大阪府立四条畷高校を卒業し、翌年横浜に転居、1968年東京藝術大学に入学します。同校在学中にシルクスクリーンでの制作を始め、同大学院では駒井哲郎に師事します。1975年大学院修了。1976年には第12回現代美術展でブリヂストン美術館賞、第11回ジャパン・アート・フェスティバルで文部大臣賞を受賞しました。以降個展に加え国内外で版画展に出品、受賞を重ねます。女子美術大学(1976~2009年)、東京藝術大学(1982~1987年)、武蔵野美術大学(1987~1989年)で非常勤講師もつとめました。1990年文化庁派遣芸術家在外研修員としてフィラデルフィアに滞在し、ペンシルバニア大学で中里斉に師事。2009年歿。

鎌谷は一貫して抽象表現に取組みました。1970年代前半には描線のストロークを用いていましたが、1970年代後半以降は直線で画面を区切り色彩を施す幾何学的で冷静な印象の表現を長く続けます。1989年頃からはその傾向が崩れ、筆で描いたような不定形の線が画面に登場、色彩もかつての多様なものから茶系を中心とした落ち着いたものへと変化しました。本作はその時期の作品で、タイトルは幾何学的な作品の頃より用いていた「Pinetree」(松)を踏襲していますが、より木肌を連想させるような表現です。その後、一度幾何学的表現に戻った時期もありますが、鎌谷はかつて書道をたしなんでいた影響もあるのか最晩年までストロークを用い、病と闘いながら最小限の色と形で成す表現を追求しました。

横浜市民ギャラリーでの展覧会:
1992年「よこはまの作家たち’92」
1992年「横浜コンスタンツァ美術交流展」