収蔵作品 今月の1点

農家の少女 ©Yokohama Civic Art Gallery

農家の少女 北井 一夫 きたい かずお

■ 制作年:1970年
■ 技法・材料:ゼラチン・シルバー・プリント
■ サイズ [縦×横×奥行]:26.7 × 39.2cm
■ 作品番号:PH-132
■ 分野:写真

撮影場所は青森県下北半島の東通村。美しく葺かれた茅葺屋根の農家の前に佇む少女は、にっこりと嬉しそうにカメラのほうを見つめています。北井一夫は1944年中国の遼寧省鞍山市(旧満州)生まれ。日本大学芸術学部写真学科を中退後、成田空港建設反対闘争の撮影と並行して、本作を含む「いつか見た風景」(197073年)、また続いて「村へ」(197381年)の各シリーズに取り組み、日本各地の農村などを旅しながら写真に写しました。高度経済成長期の当時、地方では都市への人口集中による過疎化が進み、子どもと高齢者の姿が目立つ一方、古きよき時代の暮らしの風景がまだ残されていました。故郷といえる場所を持たず、孤独な幼少期を過ごしたという北井は、こうした風景に幼い自分の姿を重ね、郷愁を感じたそうです。対象と距離をとりながら、広角レンズで人物と背景が一体に収められ、その場の穏やかな空気感まで伝わってくるようです。

横浜市民ギャラリーでの展覧会:
1992年「横浜コンスタンツァ美術交流展」