「新・今日の作家展」第3弾では、制作の過程で出会った人やものを通じて、様々な視点を作品の中に取り込んでいく作家3名を紹介しました。岩井優さんは、これまで撮影してきた接点のない動画の堆積によって構成した映像作品と、展覧会会期前の約半年間のうちに当館で排出したシュレッダーの紙屑を展示室の床に敷き詰めたインスタレーションによる新作《作業にまつわる層序学》を展示し、日常ではあまり意識されない作業の層があること思い起こさせる空間をつくりました。家族を主題としながら他者との関係性を探求してきた川村麻純さんは、日本に暮らすイスラム教徒の墓所に関する問題を知ったことを期に制作された映像と写真による新作《Tear Catcher》を発表し、文化の境界を越えて共通する死への向き合い方について考える機会をもたらしました。沖縄と新潟を拠点にしながら土地や国家間の歴史や制度に着目して制作をしてきた阪田清子さんは、塩の結晶や海岸で拾い集めた漂着物、貝殻などが素材になった作品や対岸をテーマにした映像作品など海を巡るイメージの作品から構成された展示によって、境界線を行き来する視点をあらわしました。会期中のイベントでは、各作家とゲストによる対談をおこない、それぞれの作家の制作について、さらに展覧会全体の理解を深める機会になりました。会場では、表現方法の異なる作家の作品をそれぞれの視点から鑑賞される来場者の方が多く見られました。

[展覧会データ]

  • 新・今日の作家展2018 定点なき視点
  • 2018年9月21日(金)~10月8日(月・祝)18日間 10:00~18:00
  • 横浜市民ギャラリー 展示室1・B1
  • 出品点数:33点
  • 展覧会入場者数:3,344名+関連事業参加者217名=合計3,561名

左 | 阪田清子《対岸について》2016年/映像/20分/長篇詩集「新潟」より(詩:金時鐘)(部分)
中 | 川村麻純《home/making》2018年/映像インスタレーション/20分 ※参考作品
右 | 岩井優《作業にまつわる層序学》2018年/シングルチャンネル・4Kビデオ、サウンド(部分)
    Footage from Sebastian Matthias “x / groove space” Berlin, 2016

新・今日の作家展2018 定点なき視点
New “Artists Today” Exhibition 2018 Unfixed Perspectives

  • 2018921[金]108[月・祝]
  • 10:00~18:00(入場は17:30まで)
  • 横浜市民ギャラリー 展示室1、B1
  • 入場無料 会期中無休

岩井優 Masaru Iwai
川村麻純 Masumi Kawamura
阪田清子 Kiyoko Sakata

  • 主催:横浜市民ギャラリー(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団/西田装美株式会社 共同事業体)
  • 助成:芸術文化振興基金
  • 協力:Takuro Someya Contemporary Art
  •    beyond2020

「新・今日の作家展」は、横浜市民ギャラリーが開館した1964年から開催してきた年次の現代美術展「今日の作家展」(〜2006年)の理念を継承し、同時代の作家および作品を紹介する展覧会です。
本年は、社会や人々の意識のなかにある見えない境界に向き合い、既存のシステムを再考したり、固定されることのない関係や繋がりを見出し、制作を通じて自己と他者が共鳴する場を生成したりする作家を紹介します。
国内外のコミュニティに入り生活や価値観を共有することで、法や伝統など多様な観点から各地の状況を照射する岩井優。個人の記憶や他者との関係性に関心を持ち、家族という関係を題材に社会的な問題を取り込んだ表現を探求する川村麻純。沖縄を拠点に活動するなかで感じた自己の不確かな立ち位置を出発点に、土地や国家間の歴史や制度に着目してその意味を問う阪田清子。
本展は、定点なき視点から様々な事象やアイデンティティについて思考を巡らす3名の作家の新作とこれまでの作品を通して、日常や世界を再認識し、新たな気づきを誘発することを目指します。
(※年次の現代美術展:2006~2010年は「ニューアート展」、2011~2015年は「ニューアート展NEXT」として開催>>>)

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1| 阪田清子《対岸について》2016年/映像/20分/長篇詩集「新潟」より(詩:金時鐘)

2| 阪田清子《ゆきかよう舟》2016年 展示風景(2017年 ギャルリーパリ/
横浜)/ インスタレーション / 書籍、塩の結晶

3| 川村麻純《home/making》2018年 / 映像インスタレーション / 20分 
※参考作品

4| 川村麻純《昨日は歴史》2017年 / 映像インスタレーション/15分 
※参考作品

5| 岩井優《路上のコスメトロジー》2012年 / シングルチャンネル・fullHDビデオ、サウンド / 10分55秒 / ベルリン、ドイツ ※参考作品

6| 岩井優《作業にまつわる層序学》2018年 / シングルチャンネル・4Kビデオ、サウンド Footage from Sebastian Matthias “x / groove space” Berlin, 2016

[関連イベント]

対談「舟と橋、想像力について」
阪田清子×倉石信乃(明治大学理工学研究科総合芸術系教授)

9月22日(土)15:00〜16:30
会場|4階アトリエ

対談「幽霊のはなし」
岩井優×久保明教(一橋大学大学院社会学研究科准教授)

9月29日(土)15:00〜16:30
会場|4階アトリエ

対談「他者との関係性について」
川村麻純×鈴木理策(写真家)

10月6日(土)15:00〜16:30
会場|4階アトリエ

学芸員によるギャラリートーク

9月30日(日)14:00〜14:30
会場|展示室1,B1

※いずれも参加無料、申込不要です

[出品作家プロフィール]

岩井優 Masaru IWAI

1975年京都府生まれ。2009年東京藝術大学美術研究科後期博士課程修了。国内外の地域にて参与的な手法で活動に取り組み、クレンジング(洗浄・浄化)を主題に、映像、インスタレーション、パフォーマンスを展開している。 近年の展覧会に2017年「リボーンアートフェスティバル2017」(牡鹿半島、宮城)、2013年「ホイットニー美術館ISPプログラム『メンテナンス・リクワイアード』」(ザ・キッチン、ニューヨーク)、2013年「ニードレス・クリーンアップ」(ミートファクトリー・ギャラリー、プラハ)等、近年の個展に2017年「親密の遠近法」(Takuro Someya Contemporary Art、東京)、2015-2016年「習慣のとりこ」(秋田公立美術大学ギャラリーBiyong Point、秋田)等。2016年2ヶ国4都市で公演された舞台作品『x / groove space』(振付:セバスチャン・マティアス)にコラボレーションアーティストとして演出に関わる。 http://masaruiwai.com/

川村麻純 Masumi KAWAMURA

1975年千葉県生まれ。2012年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。個人の記憶や他者との関係性に関心を持ち、家族という関係を題材に社会的な問題を取り込んだ表現を探求している。近年の展覧会に2018年「Quiet Dialogue」(東京都美術館)、2017年「港都KOBE芸術祭」(神戸ポートターミナルホール、兵庫)、2016年「オープンスタジオ」(Yale Union、ポートランド)、2015年「8人の女たち」(クリエイションギャラリーG8、東京)、「doubles vol.1」(waitingroom、東京)、近年の個展に2015年「鳥の歌」(京都芸術センター)、 2013年 「Mirror Portraits」 (資生堂ギャラリー、東京)、2012年「Mirror Portraits」(LIXILギャラリー、東京)等。2016年文化庁新進芸術家海外研修制度研修員としてニューヨークに滞在。 http://www.masumikawamura.com/

阪田清子 Kiyoko SAKATA

1972年新潟県生まれ。沖縄県在住。2001年沖縄県立芸術大学大学院造形芸術研究科修了。〈不確かな立ち位置の集合体〉をテーマに、家具や日用品・自然物などを素材として用い、日常を問いただすインスタレーション作品を発表。近年の展覧会に2018年「水と土の芸術祭」(新潟市)、2017-2018年「開館10周年記念展『邂逅の海—交差するリアリズム』」(沖縄県立博物館・美術館)、2017年「平昌ビエンナーレ」(韓国)、2017-18年「向空中突襲」(台北日動畫廊、台湾)、2017年「大地の芸術祭 もう一度見たい名作展」(越後妻有里山現代美術館キナーレ、新潟)、2012-2013「アジアをつなぐ—境界を生きる女たち1984-2012」(福岡アジア美術館、沖縄県立博物館・美術館、栃木県立美術館、三重県立美術館)等、近年の個展に2017年「不確かな立ち位置の集合体」(ギャルリー・パリ、横浜)、2016年「対岸—循環する風景」(砂丘館、新潟)等。 https://www.kiyokosakata.com/