新・今日の作家展2025 穿ちの表象 New "Artists Today" Exhibition 2025: Look Beyond What We See
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概要
畑山太志は、自身が〈素知覚〉と呼ぶ、空気感や存在感や気配などを感じ取る、身体が本来的に持っているはずの知覚を手がかりに「知覚の外にあるものにどう触れ、捉えるか」をキーワードに絵画を描いています。早川祐太は、「人間はどのように世界に存在しているのか」という問いを起点に、約10年前に患った難病のためより意識的になったという身体感覚をもとに、重力や空気、表面張力などさまざまなものの性質、現象を取り入れ、彫刻やそれらを構成したインスタレーションを発表しています。松原茉莉は写真領域が持つ環世界-すべての生物は各々の知覚によって世界を理解し構築しているという世界観-の存在に着目し、写真を水に溶かし、インクとパルプへと還元する独自の手法で制作を行っています。現代社会では多くの物や情報が私たちを取り巻いています。出品作家らが着目する対象は必ずしも見えやすいものではありませんが、私たち自身も含む存在の探求にもとづくユニークな作品は、鑑賞する人々に自身が数多のものと共存していることや忘れていた感覚を思い起こさせ、日常における新たな視点や、支点の獲得を促すことでしょう。
畑山太志《光は変化する記憶》2025年 キャンバス、アクリル 116.7×91.0cm
畑山太志《明るさの精度》2025年 キャンバス、アクリル 53.0×72.7cm
早川祐太 個展「ブラックボール」展示風景(2025年、HAGIWARA PROJECTS/東京)©Yuta Hayakawa Courtesy of HAGIWARA PROJECTS Photo by Yuki Akaba
早川祐太《ブラックボール》2025年 水、水槽、養生テープ 20.0×20.0×30.0㎝ ©Yuta Hayakawa Courtesy of HAGIWARA PROJECTS Photo by Yuki Akaba
松原茉莉《ふたしかさの標本_ゴムの木》2024年 水溶紙にインクジェットプリント(AI写真生成、フォトアブストラクティング) 20.0×13.3㎝
松原茉莉《視線_静物》2025年 水溶紙にインクジェットプリント(フォトアブストラクティング)、木製パネル 112.0× 291.0cm 「変性する写真の実体」 展示風景(COPYCENTER GALLERY/東京)
- 日程
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- 開場時間
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〜 (入場は17:30まで)
- 休館日
- 会期中無休
- 入場料
- 入場無料
- 会場
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横浜市民ギャラリー 展示室1、B1
〒220-0031 横浜市西区宮崎町26番地1
- 主催
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横浜市民ギャラリー(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団/西田装美株式会社 共同事業体)
- 助成
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公益財団法人野村財団
関連イベント
対談「あいまいな物質、行為と観測」
松原茉莉×飯田竜太(美術家/彫刻家/Nerhol)
9月15日(月・祝)14:00-15:30(13:40開場)
会場:4階アトリエ
定員:先着50名
参加費:500円
※当日13時より展覧会場受付で整理券を配布します。参加費は4階アトリエでお支払いください(現金のみ)。
対談「現実は生まれかわる」
畑山太志×沢山遼(美術批評家/武蔵野美術大学准教授)
9月27日(土)14:00-15:30(13:40開場)
会場:4階アトリエ
定員:先着50名
参加費:500円
※当日13時より展覧会場受付で整理券を配布します。参加費は4階アトリエでお支払いください(現金のみ)。
対談「さわれない世界のさわりかた」
早川祐太×伊藤亜紗(美学者)
10月4日(土)14:00-15:30(13:40開場)
会場:4階アトリエ
定員:先着50名
参加費:500円
※当日13時より展覧会場受付で整理券を配布します。参加費は4階アトリエでお支払いください(現金のみ)。
出品作家3名によるギャラリーツアー
9月13日(土)15:00-15:45
会場:展示室1、B1
※参加無料、申込不要
学芸員によるギャラリートーク
9月20日(土)14:00-14:30
会場:展示室1、B1
※参加無料、申込不要
出品作家3名によるクロージングトーク
本イベントは10/6(月)に急遽開催しました
10月6日(月)16:30~
会場:展示室1、B1
※参加無料、申込不要
プロフィール
(2025年7月23日 更新)
(2025年7月23日 更新)
(2025年7月23日 更新)
(2025年7月23日 更新)
(2025年7月23日 更新)
(2025年7月23日 更新)
開催レポート
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「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」松原茉莉 作品展示風景 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」松原茉莉 作品展示風景 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」松原茉莉 作品展示風景 左から《ふたしかさの標本_ヒメオドリコソウ》、《ふたしかさの標本_ゴムの木》、《視線_庭》、《ふたしかさの標本_スズランスイセン》、《ふたしかさの標本_ナンテン》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」松原茉莉《存在_熱》展示風景 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」松原茉莉 作品展示風景 左から《視線_意識》、《意識_視線》、《視線_干渉#3》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」松原茉莉《未分》展示風景 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」松原茉莉 《未分》展示風景 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」畑山太志 作品展示風景 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」畑山太志 作品展示風景 左から《明るさの精度》、《光は変化する記憶》、《柔らかなキューブと水の膜、光のスペクトラムは保たれる》、《流動の建設》、《時間はすべてのものに内包される》、《精霊》、《天気図 #3》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」畑山太志 作品展示風景 左から《精霊》、《天気図 #3》、《untitled》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」畑山太志 作品展示風景 左から《明るさの精度》、《光は変化する記憶》、《柔らかなキューブと水の膜、光のスペクトラムは保たれる》、《流動の建設》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」畑山太志 作品展示風景 左から《記憶に帰る場所を与えてくれる》、《正しいかたちを保つ》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」畑山太志 作品展示風景 左から《正しいかたちを保つ》、《明るさの精度》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」手前空間:畑山太志 展示風景 壁面左から《自由な現実》《飛んで、居場所をたずさえて》 奥空間:早川祐太 作品展示風景 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」早川祐太 作品展示風景 左から《地球にブラックボール》、《before it rains あめのふるまえ》、《のようなもの》、《地球にブラックボール》、《me/i/world》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」早川祐太 作品展示風景 左から《an earth of water》、《絵》(2点組)、《のようなもの》、《絵》、《before it rains あめのふるまえ》、《地球にブラックボール》、《のようなもの》、《地球にブラックボール》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」早川祐太 作品展示風景 左から《のようなもの》、《before it rains あめのふるまえ》、《地球にブラックボール》、《an earth of water》、《のようなもの》、《絵》(2点組) photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」早川祐太 作品展示風景 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」早川祐太 作品展示風景 左から《地球にブラックボール》、《のようなもの》、《絵》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」早川祐太 作品展示風景 左から《絵》、《before it rains あめのふるまえ》、《地球にブラックボール》 photo: Ken KATO -
「新・今日の作家展2025 穿ちの表象」早川祐太 《an earth of water》展示風景 photo: Ken KATO
「穴をあける、ものごとの本質や人情の機微に巧に触れる」という意味のある「穿つ」をキーワードに、3名の作家を紹介しました。
松原茉莉さんは1階展示室に4つのセクションを設け、24件39点を展示しました。はじめの3セクションではそれぞれ、AI写真生成したイメージを水溶紙にプリントし水に溶かしてアブストラクト(抽象化)した作品、秤に小さな写真とお香の燃え滓を乗せた《存在_熱》、パネル上で重層的に写真を溶かしアブストラクトした作品を展開し、最後に制作過程の映像やプロトタイプを見せる《未分》セクションを加えて構成しました。作品の静ひつな印象とともに、写真に付随する記憶の曖昧さや儚さを見る者に訴えました。畑山太志さんはB1展示室に絵画12点を出品しました。活動初期の百合を白く塗りつぶした作品からはじまり、抽象的なイメージがさまざまな大きさのキャンバスに溢れんばかりの色彩で描かれた作品と続き、鑑賞者の視線を導きました。畑山さんはかつて、誰もが経験しながらも言語化が難しい知覚を指す〈素知覚〉を造語しました。〈素知覚〉を制作の軸とした時期を含みほぼ制作順に並んだ構成によって、心境や制作の変遷と現在地を示すような空間が立ち上がりました。早川祐太さんは同じB1展示室に、彫刻や写真、ドローイング等11件12点を出品しました。早川さんは14年前に罹患した病気のため触覚を失い、現在は認識を転換して得た触覚に代わる知覚を用いています。早川さんが2025年3~4月に開催した個展のタイトルでもある《ブラックボール》は、その経験を象徴するような作品でした。本展でもこの主題が掘り下げられ、市民ギャラリー1階の空気を地下に引き込んだ《an earth of water》をはじめ、ものの存在の仕方や境界などにフォーカスした作品で私たちの知覚を揺さぶりました。
関連イベントではゲストを招いた対談、出品作家によるギャラリーツアー、学芸員トークに加え、最終日に急遽作家3名のクロージングトークを実施しました。いずれも作品や作家の理解を深める充実した内容となりました。
[展覧会データ]
新・今日の作家展2025 穿ちの表象 2025年9月13日(土)~10月6日(月)24日間 10:00~18:00
横浜市民ギャラリー展示室1、B1
出品点数:47件63点
展覧会入場者数:展覧会入場者数4,243名+イベント参加者数202名=合計4,445名
