新・今日の作家展2023 ここにいる―Voice of Place New "Artists Today" Exhibition 2023: Voice of Place-Here I am

※新型コロナウイルス感染症等の拡大状況、その他諸般の事情により、展覧会および関連イベントの内容が変更となる場合があります。

 

概要

 「新・今日の作家展」は、横浜市民ギャラリーが開館した1964年から40年にわたり開催した「今日の作家展」を継承した展覧会で、同時代の表現を紹介・考察しています。今年度は「ここにいる―Voice of Place」を副題に2名のアーティストを紹介します。
 来田広大は、土地や場所と人との関係を探るため、山等におけるフィールドワークをひとつの拠点としています。そこから臨む風景を地図と捉え、作品に対峙した際「今ここにいる」という自覚を導く、チョークを用いた制作を中心に行っています。古橋まどかは、自身に関わる地域や場所の中にある自然や人工物の変遷や軌跡に着目します。自らの経験との関係性を掘り下げ、リサーチをもとに立体や映像、収集物を用いたインスタレーションを発表してきました。
私たちはみな、どこかの場所や土地に関係しながら今ここにいます。対人距離や移動に制限のあったコロナ禍を経た今、2名の作品に相対することは、場や土地が内包する時間、人びとや生物の身体や記憶等に思索を巡らせ、自己や他者に対する内的な気づきをもたらすことでしょう。

[出品作家]
来田広大、古橋まどか

※展覧会にあわせて事前収録した作家2名のインタビュー映像をWebおよび会場で公開の予定です。

来田広大《Crawl #1》2022年 キャンバスに黒板塗料、チョーク、コンテ 91.0×91.0cm 撮影|吉本和樹 ※参考作品

来田広大《Crawl #2》2022年 キャンバスに黒板塗料、チョーク、コンテ 91.0×91.0cm 撮影|吉本和樹 ※参考作品

来田広大《Rooftop drawings −Mt. Popocatépetl (Mexico City)》2017年 ※参考作品

来田広大《東京には空がない (Rooftop Drawing)》2021年 映像 5分33秒 撮影:吉本和樹 協力:KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS, CLEAR GALLERY TOKYO

来田広大《歩荷》2021-2022年 「いちはら×メキシコ 月出工舎国際交流企画展『旅のかたち』」(市原市)展示風景 協力|荒井規向 撮影|吉本和樹

古橋まどか《焚く、枯ぶ、渡る》2022年 「DOMANI plus @愛知『まなざしのありか』展」(Minatomachi Art Table, Nagoya) 展示風景 撮影|大塚敬太+稲口俊太 画像提供|Minatomachi Art Table, Nagoya

古橋まどか《焚く、枯ぶ、渡る》2022年 「DOMANI plus @愛知『まなざしのありか』展」(Minatomachi Art Table, Nagoya) 展示風景 撮影|大塚敬太+稲口俊太 画像提供|Minatomachi Art Table, Nagoya

古橋まどか《El Nadir》2019年(オアハカ現代美術館/メキシコ) 展示風景 撮影|Alfredo Orozco Arellanes ※参考作品

古橋まどか《Raw Material, Goods and Human Body》2017年 (iCAN/ジョグジャカルタ、インドネシア)展示風景 撮影|Ardiana Putri Siswanto

古橋まどか《焚く、枯ぶ、渡る》2022、2023年(リメイド)「草枕」展(板室温泉 大黒屋/栃木県)展示風景

日程

開場時間

(入場は17:30まで)

休館日
会期中無休
入場料
入場無料
会場

横浜市民ギャラリー 展示室1、B1

〒220-0031 横浜市西区宮崎町26番地1

主催
横浜市民ギャラリー(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団/西田装美株式会社 共同事業体)
協力
愛知県陶磁美術館板室温泉 大黒屋

関連イベント

鼎談「うごき/Mover たがやし/Cultivar つくること/Crear」

来田広大×荒井規向(ラテンアメリカ研究者 ※オンライン出演)×藤本悠里子(キュレーター/コーディネーター)

日時:2023年916日(土)13:30~15:00(13:10開場)

会場:4階アトリエ

定員:先着30名

※参加無料、申込不要

対談「喪、庭、生きること―日常について 」

古橋まどか×野上貴裕(東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程)

日時:2023年930日(土)14:00~15:30(13:40開場)

会場:4階アトリエ

定員:先着30名

※参加無料、申込不要

学芸員によるギャラリートーク

日時:2023年107日(土)14:00~14:30

会場:展示室1B1

※参加無料、申込不要

作家プロフィール

Photo: Hyogo Mugyuda

来田広大 KITA Kodai
1985年兵庫県生まれ。2008年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。2010年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程油画技法材料修了。2016-2017年ポーラ美術振興財団在外研修員としてメキシコシティ滞在。近年の個展に「あどけない空 #2」(CLEAR GALLERY TOKYO、2021年)、「Ave topográfica」(Galería Karen Huber/メキシコシティ、2017年)、グループ展に「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2022」、「いちはら×メキシコ 月出工舎国際交流企画展『旅のかたち』」(千葉県、2022年)、「VOCA展2017現代美術の展望」(上野の森美術館/東京都)等。
(2023年7月22日 更新)

撮影:三浦知也 画像提供|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]                  

古橋まどか FURUHASHI Madoka
1983年長野県生まれ。2010年英国建築家協会付属建築学校インターメディエートスクール修了。2013年ロイヤルカレッジオブアート芸術修士課程修了。主な展覧会に「草枕」(板室温泉 大黒屋/栃木県、2023年)、「焚く、枯ぶ、渡る」(DOMANI plus@愛知「まなざしのありか」、2022年)、「Raw Material, Goods and Human Body」(iCAN/ジョグジャカルタ、インドネシア、2017年)、「第8回shiseido art egg 古橋まどか展 ‘木偶ノ坊節穴’」(資生堂ギャラリー/東京、2014年)等。
(2023年7月22日 更新)
荒井規向 ARAI Norihisa
1986 年三重県生まれ。高校留学を機に中南米に惹かれ、大阪で学士修了後、メキシコに渡り、メキシコ国立自治大学ラテンアメリカ研究科博士前期・後期課程修了。贈与論を中心にメキシコ南部とアンデスの先住民の社会形態及びコミュニティ経済の比較研究の中から代替経済のあり方というものを探るということが、一貫して研究主題となってきた。現在は、大学で研究を続ける傍ら、翻訳・通訳業も行い、趣味が高じてメスカルという蒸留酒をオアハカで作っている。
(2023年8月12日 更新)

撮影:伊藤靖史

藤本悠里子 FUJIMOTO Yuriko
1994年京都市生まれ。京都造形芸術大学、秋田公立美術大学大学院にてキュレーション、アートマネジメントを学ぶ。2019年よりNPO法人アーツセンターあきたに勤め、秋田市文化創造館開館準備/事業運営に関わる。企画制作した事業に「PARK-いきるとつくるのにわ」(秋田市、2022年-)、「200年をたがやす」美術分野 (秋田市、2021年)、ALLNIGHT HAPS 2019「PORTABILITY」(京都、2019年)、《「応答」~SUMMER STATEMENT 2018 報告とその後~》(秋田、2018年)など。
(2023年8月12日 更新)
野上貴裕 NOGAMI Takahiro
1996年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程所属。中心的な分野は哲学・思想史。「日常」をテーマに広く探究しています。論文に「シチュアシオニストの「日常生活」論」(2023年)。また、学術雑誌『SAPA:文化動態研究』(vol.1-3)を編集・発行。
(2023年8月12日 更新)

開催レポート

「新・今日の作家展2023」は「ここにいる-Voice of Place」を副題に、来田広大さん、古橋まどかさんの作品を紹介しました。
来田さんは幼い頃より山に登ってきたことと制作が結び付き、山等のフィールドワークを元に制作しています。絵画は黒板塗料を塗ったキャンバスやパネルに、チョークとコンテを画材に筆を用いず手や腕で描きます。本展では4壁面に1点ずつ展示した新作の《Bird’s-eye view》、ラテンアメリカ研究者・荒井規向氏の研究に触発され「贈与」をテーマに制作した絵画、映像、立体で構成する《歩荷》、高村光太郎の「あどけない話」にヒントを得た映像と新作絵画から成る《あどけない話》の3シリーズ13点の作品を展示室B1に展開しました。いずれも来田さんの山等の現場にいた強い実感や他者の視点を自らの身体を通して検証したことが反映された印象深いものでした。古橋さんは自ら訪れたり滞在した場所で得た体験や印象を掘り下げ、その場で採取したものやそれらから作った立体、映像等を組み合わせたインスタレーションを発表しています。今回は1階展示室において、インドネシアの採石場を訪れたことを機に制作した大きな石灰石を中心とする《Raw Material, Goods, and Human Body》、流木や庭土から作った焼き物等で構成し、自身の母の死を受け入れる過程とも重なった《焚く、枯ぶ、渡る(部分)》、近年取り組むようになった庭仕事を反映した《草枕》の3つの旧作に一部新作が加わり提示され、古橋さんの辿ってきた場と心象を静かに味わうような空間となりました。
関連イベントでは鼎談(来田さん)・対談(古橋さん)が行われ、それぞれゲストを交えて制作に含まれる要素をキーワードに、思索を深めるようなお話が展開され、参加者にとっても展覧会のテーマや作家の思考、作品に思いを巡らせる時間となりました。また、恒例の作家インタビューに加え会場でも作家のハンドアウトが用意され、作品理解の一助となっていました。

※展示の様子、関連イベントの書き起こしを収めた記録集は2024年2月上旬、本ページにて公開予定です。

[展覧会データ]
新・今日の作家展2023 ここにいる-Voice of Place
2023年9月16日(土)~10月9日(月・祝)24日間 10:00~18:00
横浜市民ギャラリー展示室1、B1
出品点数:6件16点
展覧会入場者数:展覧会入場者数3,714名+イベント参加者数88名=合計3,802名

関連資料