横浜市民ギャラリー収蔵作品展2003 見ましたか、収蔵作品展(大倉山記念館)

概要

横浜市民ギャラリーでは、1964年の開設以来、横浜ゆかりの作家や未来の美術界を 担う作家の企画展などを行い、関連の美術作品を集めてきましたが、常設展示室を持たず、公開の機会が少ないことから、年一度の収蔵作品展で皆様にご覧いただいています。2003年度は、大倉山記念館と横浜市民ギャラリーの2会場で開催します。
梅林で有名な大倉山公園(港北区)にある大倉山記念館は、昭和初期に建造された 白亜の建物で知られ、横浜市指定文化財に指定されています。館内のギャラリーで、 油彩画、日本画、写真、版画31点を展示します。関連イベント「アート・サロ ン」では、洋画家・添田定夫氏をお招きして、作品制作時のエピソードなどをお話いただきます。
また、当市民ギャラリーが主催する最近の展覧会では、ボランティアが活躍しています。今回の収蔵作品展では、出品作家や作品に関する情報提供や受付が主な活動です。

[出品作家]
石踊紘一、入江正巳、岡本太郎、奥村泰宏、國領經郎、斎藤義重、添田定夫、高松次郎、常盤とよ子、中谷龍一、長谷川潔、林忠彦、緑川廣太郎、山本貞
日程

開場時間

(8月20日(水)、27日(水)は19:00閉室)

入場料
入場無料
会場

大倉山記念館ギャラリー

横浜市港北区大倉山2-10-1

主催
横浜市民ギャラリー大倉山記念館(財団法人横浜市芸術文化振興財団)
共催
港北区役所

関連イベント

アート・サロン 添田定夫氏によるトーク

収蔵作品展の関連事業として行っている「アート・サロン」。今回は大倉山記念館 での会期中、洋画家・添田定夫氏をお招きし、出品作品に関連するエピソードや作品制作の本質に関わる部分をお話しいただきます。

 

日時:2003年8月17日(日) 14:00~15:30
会場:大倉山記念館第10集会室
講師:添田定夫
聞き手:内山淳子(横浜市民ギャラリー学芸員)
定員:30名
参加費:無料

 

添田定夫(そえだ さだお)
1916年現在の伊勢原市に生まれる。神奈川県師範学校専攻科卒業。横浜国立大学附属 横浜中学校での美術教員、横浜市立六浦小学校校長、万騎が原小学校校長などを歴 任。その一方、創元展、日展、ハマ展などに出品。1998年横浜市民ギャラリーで個 展。創元会名誉会員。日展会友。

開催レポート

入場者数:956名
出品点数:31点
ボランティア参加者数:34名(のべ294名)
アート・サロン 8月17日(日):60名

[ アート・サロン 添田定夫氏によるトーク レポート]
●教会を描き始めたきっかけは?
戦争中は例えば山手を描いていると憲兵が来ましてどうのこうのと言われるんですね。だから横須賀のほうへ行って描いてもいいという許可をもらって絵を描くと、それにハンコをもらわないといけない。だめなのはもう消さなくちゃいけない。だからその頃は室内で子供を描くことばかりしていたわけです。
戦後は焼け野原で風景を描こうと思っても何もない。そこに現れたのが教会。野毛はね、全部焼けちゃって。教会だけポコンと焼け残りになっていたの。それが随分印象に残っていたので描きました。

●教会から風景画へ移られたのは?
イタリアへ行って、ベニスにある教会を見て驚きました。すばらしい教会で、教会をこの頃はあんまり描かなくなっちゃったんですね。日本の教会を見ても、どれも向こうの教会に驚いた感じがしなくなったんです。むしろ日本は春夏秋冬の景色がすごくいいんだから、教会はやめましょうということで。

●制作のねらいは?
「見えたもの」を描いても中が分からない。見えたその後ろとか、存在感とかそういうものを描こうとしているんです。そうすると見えたままでなくて、水の深さとか、この杉の木は結構重いな、重さを何の色で描こうかと、それからこれはどのくらいの距離なんだろう、と考え付いてくる。だから「見えたもの」よりも「見たもの」を描く。自分の考えのアンテナを張って歩いていると、ちょっといい構図だな、って見えてくる。ただ、アンテナを張らずに歩いていても見えるだけ。見えてこない。見えるだけですよ。
木を描く時に木の肌を描くとこれは梅だ、桜だ、桐の木だ、いろんな肌を見ると分かりますね。それだと、「見えたもの」なんだよ。「見たもの」ではないんだ。どう見るかというと、春と秋と冬とは木の肌が違うし、葉っぱの色も違うし、みんな印象 が違う。太い木は非常に重いの。常緑樹なんか葉っぱがものすごく重いんだな。でも秋になると真っ赤になったり黄色になって、それはひとかかえ抱えたってフワーッとするわ。だから秋の葉っぱは軽いんだよ。・・・植物を見るのも木を見るのも、それから風景を見るのも人間を見るのも、同じような気持ちで見て描くと、非常に参考になると思うんですよ。

関連資料