榎倉康二 (ENOKURA Koji)
2021年4月1日 更新
榎倉康二 (1942~1995年)は、東京に生まれました。1968年東京藝術大学大学院美術研究科修了後、第10回日本国際美術展「人間と物質」(1970年)、第7回パリ青年ビエンナーレ(1971年)、第38回ヴェネチア・ビエンナーレ(1978年)など、国内外で活動を展開しました。《予兆ー柱・肉体(P.W.-No.46)》は、当時の横浜市民ギャラリーで撮影され、1972年の「第8回今日の作家72年展」に出品されました。自身の身体を対象に添わせることで、「私」の存在する位置を確認し世界を認識しようとする姿が俯瞰した位置から写されています。カメラの特質を制作に取り入れた榎倉は、「わたしが、物を見ていると同時にカメラ自体も物に接している、だからカメラによって何を撮るか、というよりも、何がカメラに写っているかということの方が、わたしにとって大事な問題であり、カメラの機構としてファインダーという空間の限定性をそのまま出すことによって、ファインダーからのぞかれた世界に無限定に拡大された世界を設定したりすることをやめ、ファインダーを人間の目から解放したいと思っている。」と述べています。《無題》は、1979年の「第15回今日の作家’79展」の出品作品です。塗り込んだ布に重ねられた白い布には、油絵具が浸透し滲みが生じています。物質の浸透という現象は、榎倉の制作において重要なテーマのひとつでした。この作品では布や油絵具は絵画の素材としてではなく、物質として提供されています。床へと下る布の設置からは、平面から広がる空間を志向する様子がうかがえます。