斎藤義重 (SAITO Yoshishige)
2021年4月1日 更新
斎藤義重 (1904-2001年)は、青森県に生まれました。中学生の頃から美術に親しみ絵を描きはじめますが、1920年にロシア未来派の亡命画家たちの展覧会の会場で、展示された作品に描き加える画家の姿を見たことを機に、絵画表現に限界を感じるようになります。1930年代、ロシア構成主義やダダイズムの動向を知ると、絵画や彫刻といったメディウムに属さない造形作品を手がけるようになりました。1960年代前半に、着色した合板の表面に電気ドリルで線や穴を刻んだ連作を発表した後、塗装した合板を切って重ねたり曲げたりするレリーフ状の作品へと移行します。ものとしての存在を強く感じさせるような制作はやがて、作品が設置される空間をも取り込んで展開しました。《内部》は、1981年の「第17回今日の作家<壁>展」に際して制作されました。黒色に塗った板を組み合わせ、展示室の壁際に設置したこの作品は、構築の途中のようでもあり、崩れていく過程にも見えます。「大切なのは、頭のなかの空間ではなくそこにある空間。そして、私という存在。存在するとうことは、私とものと空間の出会い。だから作品を取り巻く空間も私の作品の一部となる。」と斎藤が述べているように、《内部》は意図的に未完成に見える状態を晒し、空間とともに完結することのない制作のプロセスを提示していると言えるでしょう。