収蔵作品 今月の1点
真鶴風景 國領 經郎 こくりょう つねろう
■ 技法・材料:油彩、キャンバス
■ サイズ [縦×横×奥行]:89.2 × 115.1cm
■ 作品番号:O-069
■ 分野:油彩他
※「横浜画廊散歩」2022年10・11月号に掲載
國領經郎(1919~1999年)は横浜市生まれ。1941年に東京美術学校(現・東京藝術大学)図画師範科を卒業後、新潟県立柏崎中学校(旧制)の図画教諭として赴任しますが、3か月には召集をうけ入隊。戦後に同校に復職、1947年第3回日展で初入選します。1950年に東京へ転居、1959年には横浜へ移りアトリエを持ち、日展を主に作品を発表しました。また、長年にわたり横浜国立大学で教鞭をとるなど、生涯を通じて教育に携わり、後進の育成に貢献しました。
本作には、神奈川県真鶴町の海岸風景が緻密な点描で描かれています。手前には視線を奥へと導くように海辺の砂地や防潮堤が折り重なるかたちで配置され、中景には瓦屋根の家、その背後には山が迫り、このあたりの独特な景観を感じさせます。画面を律するように垂直に立つ樹木は紅葉し、浜辺を歩く一匹の犬の姿とあいまって、どこか寂しげな気配が作品全体に漂っています。
國領は1954年より、それまでの写生による人物画や風景画から作風を転じて点描に取り組み、15年以上にわたり研究を重ねました。点描時代の後期にあたる本作では、描く部分によって多彩な配色や筆のタッチを使い分け、単調になりやすい側面もある点描を用いながらも、隅々まで思いを行きわたらせ海辺の町の風情をとらえています。
この後、1970年代以降は國領の代名詞ともいえる砂の風景、若者の群像や裸婦などを配した静寂の風景へと主題を展開し、情感豊かな作品世界を追求し続けました。
- 横浜市民ギャラリーでの展覧会:
- 1968年「第1回春雷展」
- 1978年「國領經郎自選展」
- 1979年「横浜百景展」
- 1982年/88年「横浜上海美術交流展」
- 1990年「横浜オデッサ美術交流展」