大人のためのアトリエ講座「日本画による表現―蝶を描く」開催レポート

2017.8.12

「日本画による表現―蝶を描く」は、日本画家の荒木愛さんを講師にお迎えして20176月に4回講座で開催しました。

今回は伝統的な日本画の技法を学びます。モチーフの蝶の標本を見ながら描きます。蝶の標本は、千葉県立中央博物館からお借りしました。

「千葉県立中央博物館所蔵資料」

 

初回:67

初めに鉛筆で蝶のスケッチをします。出来るだけ細かいところまで観察して描きます。

「スケッチを描く上で、はぶいてよいところはなく、自分の中に吸収するように描く、概念を捨ててまっさらな目でモチーフを観察して描くことを心がけるように」と荒木さんからお話がありました。蝶は羽根の形や模様など描きどころがありそうです。

スケッチが終わったら小下図(こしたず)にうつります。小下図とはイメージ図のことで、画面にどのように蝶を配置するのか?背景との関係などをラフに描いて考えます。

2回目:614

大下図(おおしたず)の作成から始めました。大下図とは作品と同じサイズの下絵です。荒木さんがひとりずつアドバイスしてくださいました。この段階できっちり大下図が出来ていないと後で修正するのは難しいとのことで、みなさんしっかり描いていました。

大下図ができたら、紙が貼ってあるボードに大下図を写し、写した線を墨でなぞります。これを骨描き(こつがき)といいます。今回は後で絵具を乗せたときに墨の線が見えないほうがいいので濃くは描きません。

骨描きが済んだらいよいよ着彩です。まずは下地(背景)を水干絵具(すいひえのぐ)で塗ります。日本画の絵具は、顔料と膠液をその都度絵具皿にのせて指でよく溶いて使います。

3回目:621

作品のメインとなるモチーフを描きます。日本画で使う絵具は大きく分けて水干絵具と岩絵具がありそれぞれの特性のレクチャーがありました。水干絵具は粒子が細かいので混ぜ合わせることが出来るため混色時の使用にむいています。岩絵具は粒子が粗いので混ぜ合わせることはできませんが層を重ねると画面に厚みが出ます。絵具の粒子の細かさによっても見え方がちがってくるので重ね順も考えるとよいそうです。絵具の溶き方もおさらいしてから制作を始めます。

4回目:628

絵具で描く部分を仕上げていきます。

砂子を蒔いた後に絵具をのせると砂子の効果がうすれてしまうので、最後に砂子を蒔きます。

砂子をのせたい部分にドーサ液(膠とミョウバンが溶けた液体)を塗ります。網がはってある竹筒に金箔を入れてタタキ筆(先がカットしてある専用の筆)で竹筒の中から金箔を押し出します。網目から金箔が細かくなった砂子がはらはら出てきます。しばらく水分が引くのを待ってあかし紙(金箔が挟んである薄い紙)で抑えると砂子が定着して完成です!

最後に皆さんの絵を並べてお互いの作品を鑑賞しました。蝶をしっかり観察しスケッチに時間をかけたので、作品の完成度が上がったようです。絵具の作り方や砂子蒔きなど日本画の画材の取り扱いも詳しく学べて、皆さん楽しんで制作されていました。同じ蝶をモチーフにしても色々なイメージの絵が並んでステキな講評会となりました。

 

 

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