収蔵作品 今月の1点

日本丸メモリアルパーク ©Yokohama Civic Art Gallery

日本丸メモリアルパーク 安保 健二 あんぼ けんじ

■ 制作年:1988年
■ 技法・材料:油彩、キャンバス
■ サイズ [縦×横×奥行]:91.2 × 117.0cm
■ 作品番号:O-014
■ 分野:油彩他

※「横浜画廊散歩」2016年7月号に掲載

安保健二(あんぼ・けんじ)は1922年愛媛県新居浜に生まれ、1931年に横浜に移り住みました。神奈川県立川崎中学校在学中、同校の美術部で小関利雄(1907‐1989)に師事、1942年に東京美術学校油画科に入学しました。予科を経て翌年本科に進み、小磯良平(1903-1988)、寺内萬治郎(1890-1964)に師事しましたが、12月に学徒出陣で大学を離れることを余儀なくされます。海軍に配され特攻隊要員にまでなりましたが、終戦を迎えたことで1945年に復学。1948年に同校を卒業しました。翌年より新制作展に出品を始め、1952年に同会新作家賞受賞、初個展を開催。1966年に新制作協会会員となりました。1967・68年には安井賞展に出品しています。

安保は画歴の最初期には人物等も描いていましたが、その対象は屋外の風景へと移り、次第に船や港、海を主なモチーフとするようになりました。モチーフを絞って以降、風景の中に人物が描かれることは稀で、確かなデッサンに基づき写実的にあらわされた、乗る人なく港に浮かぶ船や水面の穏やかな様子には、静寂さが漂っています。 本作に描かれている日本丸は1930年に建造され、1984年まで航海していた練習帆船です。戦時中には物資の輸送、戦後には遺骨収集にも駆り出されました。同作は上海との姉妹都市提携15周年を記念した「横浜美術展・横浜百景展」のために描かれたもので、制作を依頼された作家らは市内の建造物等から思い思いのモチーフを選び取っていますが、ただ一人日本丸を描いた安保の思いはどこにあったのでしょうか。1994年没。

横浜市民ギャラリーでの展覧会:
1976年 春雷展
1978年 春雷展
1979年 横浜百景展
1982年 横浜上海美術交流展
1988年 横浜・上海友好都市提携15周年記念
「横浜美術展・横浜百景展」
1989年 海と船への限りない憧憬 安保健二自選展